研究課題/領域番号 |
23650360
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
硯川 潤 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究員 (50571577)
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研究分担者 |
中村 隆 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 義肢装具技術研究部, 義肢装具士 (40415360)
井上 剛伸 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 部長 (40360680)
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キーワード | うつ熱 / 温熱生理反応 / ペルチェ素子 / 頸髄損傷 / 身体冷却 |
研究概要 |
本研究では,頸髄損傷者をはじめとする体温調節機能障害を有する肢体不自由者のためのうつ熱予防を目的として,車いす背部からの冷却で体温上昇を防ぐ接触式身体冷却システムの開発を行っている.今年度は,接触面からの冷却で誘発される温熱生理反応の特徴抽出により,同システムが失われた体温調節機能を代替し得るかどうかを検証した. 高温環境下において,健常成人を被験者とした温熱生理反応計測実験を行い,各生理パラメータを比較した.発汗量,皮膚発汗率,皮膚温度,鼓膜温度,皮膚血流量,血中酸素濃度,血圧などを網羅的に計測し,各パラメータの挙動や関係性を冷却・非冷却時で比較することで,接触面からの冷却が人体の生理反応に与える影響を検証した.その結果,以下のような知見が得られた. i) 接触面からの冷却で,発汗量を有意に抑制できることが分かった.さらに,冷却時は発汗量が小さいにもかかわらず,深部体温の上昇は見られなかったため,冷却システムが体温調節の一部を代替できることが示唆された. ii) 冷却時は非冷却時と比較して,皮膚温の個体間ばらつきが小さくなったり,皮膚温と皮膚血流量の相関がくずれたりするなど,温熱生理反応にいくつかの特徴がみられた.これらは,人為的な身体‐環境間の熱収支系への介入が誘発した生理反応であると考えられ,詳細な検証が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
接触式冷却システムの効果と,それで誘発される特徴的な温熱生理反応を確認できたため,今年度の目的は十分に達成できたと考える.特に,通常みられる生理反応が,冷却によって大きく変調されることが分かったことは大きな成果であり,今後の発展が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,i) 今年度の実験において冷却・非冷却間で差が確認された生理パラメータの,詳細な挙動のモデル化,ii) 背部冷却面における接触圧分散性と熱伝導性を両立させた熱的インターフェースの開発,の2点を目的とする. i) では,環境温度に依存した生理反応の特徴変化をとらえることで,接触面からの冷却が介在した際の体温調節反応と,熱収支バランスの経時特性を定性的に説明するための基礎的な指針を構築する.ii) では,柔軟性のある熱伝導材料の封止・成形技術を確立することで,熱移動を損なわないクッションの製作を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に予定していた熱伝導性クッションの素材選定において,さらなる検討事項が生じたため,部材購入費用の一部を次年度に使用することとした. ・消耗品:熱伝導材料 350,000,シーティング部材 150,000 ・旅費:学会参加費 200,000 ・謝金:被験者謝金 45,588
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