研究課題/領域番号 |
23650395
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
寒川 恒夫 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (70179373)
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キーワード | 身体論 / 伝統武術 / エスノサイエンス / 韓国 / 中国 / タイ / インド / インドネシア |
研究概要 |
全3年度計画の第2年度にあたる本年度は、中国、タイ、韓国を中心に伝統武術を支えるエスノサイエンス身体論関係資料の収集と分析をおこなった。中国については、河南省登封県の少林寺に伝わる少林寺武術が、タイについてはバンコックのワット・ポー寺院に伝承されるタイ伝統医学の身体論が、また韓国についてはソウルの韓国伝統武術国仙道が調査された。中国の少林寺武術の場合、当寺が元来禅宗の修行寺であることから、武術とのかかわりも修行僧の健康維持手段としての位置づけがなされていたが、後代に、心身修養が武術に期待され、その理論整備が種々試みられてきたことが、次第に明らかになりつつある。タイの場合、ムエ・タイを含めたタイ伝統武術(クラビ・クラボーン)の学習にあたって、提示される身体論は、タイ伝統医学の身体論にのっとることが多い。それは、一方でインド伝統医学、他方で中国伝統医学の影響を受けたセン理論を基礎にするものである。センは中国の経絡に相当して、超自然的気体であるロムが身体を流れる道筋を意味する。例えば、イターと呼ばれるセンは臍の下から始まり、恥骨上に伸び、左脚に向かい、そこから背面に回り、脊髄の左側を頭頂部まで上がり、左の鼻に下りてくる、といった具合である。タイの伝統医学では、健康と病気を含む一切の身体状況が、このロムの流れによって説明される。伝統武術の学習に際しても、センとロムの身体論が重要な働きをおこなっている。こうした身体論は、次年度調査予定のインドとインドネシアにも期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初、韓国とインドの伝統武術エスノサイエンス身体論研究を展開する計画を提示していた。しかし、実際には、インドを取り上げることができなかった。インドに代えて、次年度計画に示した中国とタイ研究を先行させた。タイの成果は、かえってそのルーツであるインド研究を容易にさせることになったと評価される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果は、中国とタイの伝統武術を支える、それぞれ個別のエスノサイエンス身体論を抽出するのに必要な資料を収集し、その分析に着手しえたことであった。本年度活動の方向性は次年度研究計画においても、インドネシアとインドについて展開される。また、そのようにして集積された当初予定のアジア諸地域の伝統武術エスノサイエンス身体論の比較研究を通して、本研究課題を遂行してゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は本研究課題の最終年度にあたるため、インドとインドネシアの調査以外に、当初計画通り、研究課題達成に必要な資料が不十分と判断される地域について、補充調査をおこなう。そのため、研究費の多くは調査にともなう旅費そして通訳謝金にあてられる。「次年度使用額」の18,208円は旅費の端数処理にともなって発生したものであり、次年度の通訳謝金にあてられる。
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