研究概要 |
ICT技術である「オンデマンド交通」を、高齢社会の問題解決に資するような社会構造創造的社会技術としての可能性を検証した。質的な社会調査という社会学的な調査と、ICT技術の特質を生かした利用者の行動ログを分析する工学的な手法を併用することにより、単に、買い物弱者の救済など、利用者が広域的に分散化した社会での公共的なモビリティの確保のために開発されたこの技術は、蓄積した個人の移動情報を個人情報に直接アクセスすることなく、システム的に利用することで、新たな形のコミュニケーションやコミュニティを生成する可能性を持っていることが論証された。モビリティという単機能ではなく、医療、社交、購買、など、多機能に展開する「社会技術」として展開する潜在的な能力を持っていることが示唆された。オンデマンド交通が新たな交友関係を創出し、また,従来の交友関係の深化に寄与し、また遠隔地の人たちの交友関係を生み出していることを、工学的にビジュアルに示すことも出来た。また、一方で、環境倫理学の手法で技術の多義的枠組みという新たな理念的な枠組みを用いることにより、オンデマンド交通がICT技術の特質をうまく適合して社会創造型の新しい社会技術として展開できることを示すことが出来た。このことにより、人文社会科学的な研究を工学的手法と融合する新たな方法論が開発された。
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