近代効用理論には3つの類型化(確実性下、リスク下および不確実性下の意思決定)された意思決定問題のそれぞれにおいて定式化された公理体系がある。本研究の目的はそれらの公理体系を統一的に研究できる枠組みを提案し、それぞれの類型化における効用モデルと一般化モデルを導出できる統一的な公理体系を構築することである。具体的には上記の類型化に依存しない一般的な代替案の集合の上に定義された単項関係や推移的二項関係を定量的に表現する線形表現や双線形表現が存在するための必要十分条件を明らかにすることである。 平成23年度には代替案の集合が高々加算である場合の研究を行った。特に特殊な代替案の例として有限次元ベクトルの集合を考える場合の線形不等式系の解を与える必要十分条件を明らかにした。その結果は Monotonic additive utility という題目で論文にまとめ、現在は改定作業中である。平成24年度には任意の非空な集合 X 上の実数値関数で、その値がゼロにならない X の要素の数が有限であるものの部分集合 A により代替案の集合が与えられるものを前年から引き続き考察した。特に A が加算集合の場合にアルキメデス的キャンセレーション条件が必要十分であることを明らかにし、前年度から Additive measurement on countable sets という題目で論文の改定作業を引き続き行った。 平成25年度には前年度後半から検討をはじめた A 上の二次不等式系の解の存在条件について、A が有限集合の場合に限って引き続き研究を行った。これに関しては現時点で論文にまとめるような成果は得られていない。これと並行して、線形不等式系に限ってこの研究のアプローチの汎用性を示すために Finite additive posets という題目で論文作成中である。
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