研究課題/領域番号 |
23655160
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
植田 正 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90184928)
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研究分担者 |
白石 充典 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00380527)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | Fab / 安定化 / 蛋白質 / アミノ酸変異 / デアミデーション |
研究概要 |
今年度は我々が変異体導入により安定化したヒト型Fab(改良Fab)をさらに安定化する基盤的な研究として、この改良FabのX線結晶解析を目的として研究を実施した。我々が報告している大腸菌で発現したFabのH鎖とL鎖を試験管内で再生させる方法(Fujii et al. J. Biochem. 2007)に従って調製した改良Fabを市販されている結晶化スクリーニングキット(クリスタルスクリーンI及びII、ウイザードスクリーニングI及びIIなど)の条件で結晶化を試みたが、顕著な結晶が得られなかった。そこで、Pichia pastorisを用いて野生型Fabの発現系の構築を行った。形質変換株のスクリーニングを行い、20mg/Lの濃度で野生型Fabを発現することを確認した。今後はこの方法で改良Fabの調製を行い結晶化を試みる。一方、平衡論的に安定化するために変異体の導入について行った。Fab定常部でデアミデーションが生じやすいと報告(Chelius et al. Anal. Chem. 2005) されているので、実際我々が用いているFabにおいて加速劣化試験を行って、FabのL鎖のAsn138がデアミデーションが起こりやすいことを検証した。138番目をAspに変換するとFabは平衡論的に非常に不安定になった。そこで、FabのL鎖のAla138変異体を作製した。この変異体は加熱劣化試験において、野生型より安定になった。次に、多重変異により、より安定化を示すかどうかを評価するために、改良FabのL鎖をAla138に変異したFabを調製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
改良FabのX線結晶解析ができないのがその理由である。そのため安定な改良Fabを効率よく作製できていない。この方法を改善すべく、新たな発現系を構築して結晶化を試みている。一方、X線結晶解析ができないことも想定はしていたので、並行して化学的に不安定なアミノ酸残基を変換することで、野生型より加熱劣化試験に対して安定なFab変異体を作製することができたことから、総合的な評価としては(3)とした。
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今後の研究の推進方策 |
申請書通りに改良FabのX線結晶解析を引き続き実施する。また、Fab定常部の構造は同一なので並行して野生型のFabの変異体の調製を実施する。併せて、高分子ポリマーを付加することで、不可逆変性に対して安定なFabの調製を試みる。今年度後半では、その段階でもっとも安定なスキャフォールドを用いて応用実験を試みる。すなわち、Fab定常部に蛋白質(酵素)を連結して、蛋白質(酵素)の高機能化を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
6~7割はFabの変異体、Fab定常部との融合蛋白質の調製のため、遺伝子工学用試薬、蛋白質培養用試薬、精製用樹脂、解析用HPLCカラム及びX線結晶解析に関わる試薬の購入などの物品費に使用する。1~2割はX線結晶解析のための出張旅費及び学会等で成果発表のための旅費に使用する。残りは謝金、実験の外部委託、論文掲載料などにふりわける。
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