研究課題
実験は、真空槽内の2枚のガラス板の隙間に多価イオン(1~13 kV加速のAr8+)ビームを通過させ、下流で通過ビーム強度を測定することで行われた。上下1対のガラス板セットは2、3センチ四方の大きさで各1枚は1 mm厚、隙間は0.1 mmであった。このセットは、下流側を少し持ち上げた状態で設置され、下板が帯電したときのみビームが偏向し隙間を通過できるようになっている。いくつかのエネルギーのビームを入射すると、入射強度は一定でも振動的通過が観測された。次に、上板を外した状態で同様の実験を行った。ビーム強度測定は、MCPを使った2次元位置検出器を使い、それぞれのイオンの位置、到着時間を記録した。計数限界は毎秒3,000個程度なので、ビームは数μmから1ミリに絞って入射した。これにより、通過(反射)イオン数を減らし、また、効率よく帯電できるようビーム内の粒子密度も向上させた。測定では、秒の単位で、反射ビームがMCP上を次々に移動していく現象も発見された。これは、ガラス板上の帯電分布が刻々と変動していることによる。入射ム強度から考えて放電は頻繁にはおこらないはずで、一度、“ソフトな”絶縁破壊が起こり、ほんの一部だけ残して絶縁破壊されたパスがガラスのバルクあるいは面内に生じ、その一部残った絶縁箇所が、周りの電場に応じて抵抗値を変化させていると考えれば矛盾がない。このようなパスをフィラメントと呼ぶが、ReRAM(resistance RAM)素子と同じ現象が、ソーダライムガラスでも実現する可能性を示すことができた。また、MCP上で観測された振動パターンは、最初の上板がある実験と同じgeometryを仮定すると、振動的通過の挙動とよく一致することも確認できた。
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