原子炉ニュートリノを使った実験は、日本原子力研究開発機構の原子炉JRR3の利用を計画していた。東日本大震災のために同原子炉は運転停止したが、平成24年2月に運転が再開される予定となっていた。ところが、諸般の事情により運転開始時期が先送りになり、平成25年3月になっても同原子炉の運転の再開はなかった。このため、本研究では、 (1)密封線源に対するベータ崩壊率の精密測定方法の確立、および (2)自然ニュートリノの弱い相互作用の反応機構の研究に重点をおいて研究を行った。 (1) コバルト60密封線源にニュートリノによる摂動処理を行った場合に、その処理の前後でゲルマウム検出器によってベータ崩壊率を測定することになる。密封線源をゲルマウム検出器に設置し直すことになるので、コバルト60密封線源内の真の線源位置の再現性が必要である。本研究ではコバルト60密封線源を回転操作できる治具を製作し、コバルト60密封線源内のコバルトワイヤ片による光電ピーク測定の再現性を調べた。その結果、コバルトワイヤ片の向きを一定に制御できない場合には、線源強度の推定に単純な位置誤差の効果を超える影響がでる場合があることが確認された。このコバルトワイヤ片の問題に回避するには、液体の密封放射線源の利用が適切である。 (2)反応機構については、当初企画した外部摂動で生成した弱い相互作用の補助場を利用するのはなく、自然ニュートリノと自然界に存在する補助場を利用した研究を行った。低エネルギーの自然ニュートリノが、補助場の作用によって、弱荷型粒子と弱電気モーメント型粒子に分離して、弱電型粒子が原子核と、弱電気モーメント型粒子が電子に結合する描像の定式化を行い、それぞれの結合エネルギーがeV級であることが示唆された。一方、低エネルギー自然ニュートリノの作用と太陽活動との相関を調べ、太陽活動との相関が否定できない結果を得た。
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