研究課題/領域番号 |
23658024
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
弦間 洋 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70094406)
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研究分担者 |
瀬古澤 由彦 筑波大学, 生命環境系, 助教 (90361310)
巨瀬 勝美 筑波大学, 数理物質系, 教授 (60186690)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 果樹 / MRI / 非破壊計測 / 生体情報 |
研究概要 |
今年度は、既に発生の確認できた萎縮症発生枝と健全枝の水分通導機能を比較した。すなわち、2011年7月下旬に筑波大学農林技術センター果樹園植栽の‘幸水‘樹を用いて、小型MRI装置出が画像資料を入手した。小型MRIの仕様は永久磁石は静磁場強度0.3T,ギャップ幅80mm、静磁場均一領域30mm,重量57kgであり、これをハンドリフトに搭載して、地上から160cm昇降可能とした。勾配磁場コイルは、平行四線型(Gx、Gy)とMaxwell pair型(Gz)とし、それぞれの勾配磁場効率は、22,8.0,7.3mT/m/Aであった。Gxは枝内の水の流れ(ADC:みかけの拡散係数apparent diffusion constant)を計測する際に必要な磁場勾配強度を補強するため30ターンとした。一方、生体情報については、SFー8 サップフローメー(Daletown 社製)によって実際の樹液流動を、さらにプレッシャーチャンバー法によって着生葉の水ポテンシャルを計測した。 その結果、MRIパラメータとしてADCは‘幸水’樹体内の水分生理が変化することとよく一致し、夜間は低位(2×10-5cm2/s)であるが、6:00以降上昇して12:00には5×10-5cm2/s以上を示し、その後低下した。ADCとT1パラメータは萎縮症発生枝で健全樹に比べ、低位であることが明らかとなった。一方、生体情報としての水ポテンシャルの日変化も発生枝着生葉で健全樹と比べ低位で推移することから、水分通導機能に支障を生じていることを明らかにした。萎縮症発生の予測技術としては、現在、萌芽前の枝を供試して枝内のMRIを用いた水流動の計測の可能性の有無、さらにはサップフローメータを用いた萎縮症発生枝の検出を試みている。後者では水分流動に差異のあるものが検出されており、達観による萎縮症発生と一致するものと推定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規開発した小型MRI装置のフィールドでの利用ができることが判明し、その実用性が明らかとなった。ただし、今年度用いた枝は、既に発生した萎縮症枝であり、本来の目的である、予測技術開発には至っていない。一方、生体情報の入手は枝発育時とともに、現在萌芽前の枝を用い計測を行っているので、小型MRIで得られる画像解析により予測技術として利活用できる可能性は大きいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
小型MRIによって入手できるパラメータとマッピング情報により、予測技術にまで発展できるよう、サップフロー・着生葉のクロロフィル蛍光値や水ポテンシャル等の生体情報との関連を明確にする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度はMRIによる調査を中心に行ったため、当初予定していた生体情報の測定についてすべて網羅できなかった経緯があり、経費を次年度に持ち越し、以下の測定に資する経費として使用する計画としている。すなわち、萌芽前の枝内の水分流動がMRI計測によりできるかを見極めるため、種々のステージの枝を用いて、詳細に調査検討する。平行して萌芽前(展葉前)の枝を多数用い、計測値から達観による障害発生枝との関係を明確にする。さらに上記のように葉の展開後にも樹液流動、着生葉のクロロフィル蛍光値、水ポテンシャル、発生樹の根系の活性計測等を予定しており、これらの調査に該当する消耗品の購入に充てる予定である。
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