研究課題/領域番号 |
23658052
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
阿部 誠 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (70414357)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アレチウリ / 食害抵抗性 / 植食性昆虫 |
研究概要 |
アレチウリの切り葉および鉢植えを用いて、チョウ目昆虫(ヨトウガ、ハスモンヨトウ、ウリキンウワバ)およびコウチュウ目昆虫(トホシテントウ、ジュウニマダラテントウ)の成育試験を行った。比較対照として、カボチャ(ヨトウガ、ハスモンヨトウ、ウリキンウワバ)、キカラスウリ(トホシテントウ)、オキナワスズメウリ(ジュウニマダラテントウ)の切り葉および鉢植えを同様に用いた。その結果、いずれの昆虫種もアレチウリの切り葉では成育を完了できたが、アレチウリの鉢植えを与えた場合ではウリキンウワバ以外の昆虫種は成育を完了できなかった。また、ウリキンウワバにおいても、カボチャ鉢植えでの成育完了率は70%であったが、アレチウリの鉢植えでは成育完了率は10%程度であった。以上の結果から、アレチウリの葉には摂食阻害物質は存在せず、植物体から切り離していない葉において昆虫の食害を阻害する要因が作用していることが示された。 ハスモンヨトウおよびウリキンウワバ成虫を用いて、カボチャ葉あるいはキュウリ葉とアレチウリの葉に対する産卵選択試験を行った。その結果、カボチャ葉あるいはキュウリ葉とアレチウリ葉への産卵数に有意な差は認められなかった。以上の結果から、アレチウリ葉にはチョウ目昆虫2種の産卵を阻害する要因は存在しない事が示された。 本年度の結果から、アレチウリの食害抵抗性要因は、単なる産卵阻害要因や摂食阻害物質の存在によるものではなく、アレチウリの植物体全体が示す生理作用(葉を噛んだ際に滲出する篩管液による作用)が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は幼虫がウリ科植物の葉を食害する昆虫種を選び、チョウ目昆虫3種、コウチュウ目昆虫2種の計5種を試験に供試した。その結果、アレチウリの切り葉ではいずれの種も成育が可能であり、葉を植物体から切り離さない鉢植えの状態で与えた場合ではほとんど成育できないことを見出した。この結果から、アレチウリの葉には一般的な摂食阻害物質が存在しないことが明らかになった。アレチウリ葉を植物体から切り離さない場合にだけ摂食量が低減し、成育が完了できなかったことから、これまでの植食性昆虫に対する食害抵抗性とは異なる抵抗性機構がアレチウリには存在することが示唆された。また、チョウ目昆虫2種の産卵選択試験では、アレチウリの葉への産卵を回避しなかったことから、アレチウリには産卵阻害要因は存在しないことを見出した。チョウ目昆虫に関しては、アレチウリへの産卵を回避しているのではなく、産卵後の幼虫が葉を摂食できずに成育できないことにより、寄主植物として利用できないことが示された。以上の結果が得られたことにより、ほぼ当初の計画どおり研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に予定していたウリハムシを用いた試験を実施できなかったため、ウリハムシを用いた試験を平成24年度に実施する。この結果と前年度の結果を受けて、アレチウリに存在する食害抵抗性要因について検討を進める。これまでの研究から、アレチウリの葉を切り取った際あるいは昆虫が鉢植えしたアレチウリの葉を摂食した際に大量の篩管液が流れ出てくるので、これが摂食を阻害している可能性が考えられる。したがって、平成24年度はアレチウリの篩管液の分析に焦点を当てて研究を進める。特に篩管液の物理化学的性質(葉を切り取った際の滲出量、酸化による硬化の程度、硬化に関与する成分の特定、摂食刺激物質あるいは摂食阻害物質の有無)について、他のウリ科植物(カボチャ、キュウリ等)の篩管液との比較検討を行う。また、昆虫の口器に篩管液を塗布し、アレチウリと他のウリ科植物間で、昆虫の摂食抑制効果に差があるかどうかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、篩管液の物理化学的性質に焦点をあてて研究を進める。特に化学分析では主にHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて研究を進める。当初の計画どおり、紫外光吸収のない化合物に対応した検出器(示差屈折計)を備品として購入する。消耗品として、化学分析に伴う試薬類および分析カラム等、昆虫の飼育および植物の栽培に必要な器具類を購入する。また、本研究の成果を国内学会および国際昆虫会議で発表するために、参加費および旅費を支出する。
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