アレチウリは特定外来生物に指定されているウリ科の強害雑草である。ウリ科食性昆虫のウリキンウワバ、トホシテントウ、ジュウニマダラテントウに植物体から切り離したアレチウリの葉を与えるとよく摂食するが、植物体から切り離さない葉はこれらの昆虫種の摂食を受けにくいことをこれまでに報告した。葉と同様に、他の部位(胚軸、茎および根)も植食性昆虫による食害を受けにくいかどうかを、広食性で様々な植物の茎や根を食害するカブラヤガ幼虫を用いて検討した。アレチウリの葉および茎を切り取り、ペトリ皿内でカブラヤガ終齢幼虫に選択条件下で摂食させると、アレチウリの葉を選好して摂食した。本葉が1~2枚展開したアレチウリ苗をカブラヤガ終齢幼虫に与え、胚軸あるいは根を摂食するかどうかを調べた結果、胚軸および子葉を選好して摂食した。根の摂食は確認できなかった。また、本葉が1~2枚展開したカボチャ苗およびアレチウリ苗を選択条件下で摂食させた結果、本種幼虫はアレチウリ苗を選好して摂食した。一方で、本葉が8~10枚展開したアレチウリ苗を本種終齢幼虫に与えた場合、アレチウリのどの部位においてもほとんど摂食が認められなかった。これまでの研究から、アレチウリは本葉を傷つけると粘着性の篩管液を分泌することが確認されているが、本葉が1~2枚展開したアレチウリ苗の子葉や胚軸につけられた食痕を確認すると、本葉で認められたような篩管液が分泌・固化した形跡は認められなかったことから、本葉における篩管液の分泌・固化が胚軸や子葉では起こらないために、カブラヤガ幼虫に摂食されたと考えられた。一方で、生育が進んだアレチウリの苗はカブラヤガ幼虫にほとんど摂食されなかったことから、アレチウリは生長に伴い、葉だけではなく茎を含めた植物全体において食害抵抗性を高めていることが示唆された。
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