研究概要 |
本研究の目的はセルトリ細胞の機能解析に役立つ長期培養系を確立することである。今年度においては、特にセルトリ細胞の増殖系の確立に焦点をあてて研究を遂行した。セルトリ細胞は生体内では生後2週間程度で増殖停止を起すこともあり、その細胞機能の解析が進んでいない。そこで我々はセルトリ細胞を新生児(0-2日齢)および成体(6週齢)マウスより回収し、精子幹細胞培養用の無血清培地を改変することで、その試験管内での増殖が起こることを確認した。コラゲナーゼおよびトリプシンによる二段階酵素処理によりセルトリ細胞を回収した後、EGF, FGF2, GDNF, FGF9を添加した培地に懸濁し、ラミニン上での培養を行うと、生体内のセルトリ細胞マーカーである、Sox9, WT1, claudin 11, vimentinの発現も見られた。さらに新生児に限らず成体由来のセルトリ細胞でもKi67の発現が見られたことから細胞分裂も確認された。これらの結果は本培養条件において培養セルトリ細胞は生体内のセルトリ細胞に近い性質を保持しつつ増殖を行っていることが予想された。このセルトリ細胞の増殖は、通常増殖が抑制されているとされる成体由来の場合でも確認することができたことから、生体内における増殖抑制の解除が起こったことが示唆される。上記の初代培養系におけるセルトリ細胞に、さらにその増殖を促進するためにSV40 large T抗原およびsmall T抗原をレンチウイルスベクターを用いて導入したところ、培養と共に細胞の形態が変化し、形質転換が起こることが分かった。
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