研究課題/領域番号 |
23659520
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平家 俊男 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90190173)
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研究分担者 |
平松 英文 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40362503)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 筋ジストロフィー症 / 骨格筋 / iPS細胞 |
研究概要 |
筋ジストロフィー症に代表される筋変性疾患に対する根本的治療法は存在しない。造血細胞と異なり、骨格筋組織を正常人、患者より繰り返して頂くことは困難である。そのため、骨格筋を対象とする疾患研究は遅々として進んでいない。多能性幹細胞であるヒトES細胞、ヒトiPS細胞から骨格筋幹細胞(satellite細胞)や成熟骨格筋を作成することが可能となれば、現在の研究の障壁が大きく取り除かれ、多大な研究の進展が期待される。しかし、一方で、多能性幹細胞から心筋細胞作成に至る報告は数多く散見するが、骨格筋作成に至る報告は少ない。その意味で、骨格筋形成過程おける発生プログラムには不明の点が多く、この研究の成果として、骨格筋発生に至る分子機構が明らかとされることが予期される。我々の開発したマウスES細胞、マウスiPS細胞を用いて骨格筋(幹)細胞を作成する基盤技術をヒトES細胞、ヒトiPS細胞に応用し、骨格筋(幹)細胞作成を試みたが、マウスでの基盤技術を直接用いるのみではヒトにおいては骨格筋(幹)細胞作成は不可能であることが判明した。そのため、平成23年度にいては、新規にヒト成熟骨格筋を作成できる分化系を確立した。この細胞をmdxマウスに移植することにより、マウスにおいてヒト骨格筋へと分化できることを確認した。さらに効率の改善を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ヒトES細胞、ヒトiPS細胞から骨格筋幹細胞を作成する、2)骨格筋幹細胞の全身組織への生着法の開発、3)筋ジストロフィー症患者より作成したiPS細胞を用い、上記の手法にて骨格筋作成を行う、3点を平成23年度の具体的研究目標と定めた。1)については、以下の方法で、ヒト骨格筋の作製を行った。ヒトES細胞、ヒトiPS細胞を維持培養培地でsmall clusterを形成させ、7~14日間培養により細胞凝集塊を作成した後、ゼラチンコートしたプレートに付着させ、さらに3週間insulin、transferrin、seleniumを含む無血清培地にて培養した。その後、培養液10%血清を添加した分化誘導培地にて培養を継続することにより、ヒト骨格筋を作製した。現在、マウス骨格筋幹細胞マーカーとなるVE-cadherinについてヒト骨格筋幹細胞マーカーとしての意義について検討するとともに、間葉系細胞マーカーCD73、ラミニン受容体であるインテグリン等を用いて分取し、ヒト骨格筋幹細胞活性を検討する研究を引き続き展開してる。2)については、NOGマウス、mdxマウスを用いて、移植後長期間にわたってヒト骨格筋形成に寄与すること、骨格筋障害に反応してヒト骨格筋再生が誘導されること、二次移植等により骨格筋幹細胞活性を評価中であり、期待できる現象が観察できている。3)を実行するため、筋ジストロフィー症7症例の患者さんからiPS細胞作製のための皮膚生検をさせて頂き、iPS細胞を作製中である。
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今後の研究の推進方策 |
我々が開発したヒトiPS細胞からの骨格筋作製方法において、長期にわたって骨格筋再生能を有する幹細胞の作製を行う。その過程で、ヒト骨格筋幹細胞マーカーとしての同定を行い、骨格筋幹細胞の単離とその臨床応用を目指して、NOGマウス、mdxマウスを用いた長期骨格筋形成能の確認、再移植時における骨格筋分化能を確認する。併せて、全身の骨格筋への投与の方法について、検討を進める。一方、患者さんに由来する疾患特異的iPS細胞作製については、多くの患者さんのご協力を頂き、この1年間で7症例について作製過程に入っている。我々の開発した骨格筋分化方法を用いて、疾患特異的iPS細胞からの骨格筋分化行う。作製した骨格筋、骨格筋幹細胞において、新規治療法として提唱されているエクソンスキッピング法の妥当性、細胞死の観点から見た骨格筋、骨格筋幹細胞の生物学的活性について検討を行い、病態の解明、新規治療基盤の開発につなげる。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)疾患特異的iPS細胞由来骨格筋幹細胞を用い、細胞障害を引き起こす分子、物理的ストレスに対し、正常iPS細胞由来骨格筋幹細胞、筋ジストロフィー症由来iPS細胞間において細胞死、寿命等の反応性を検討する。その結果を踏まえ、筋ジストロフィー症由来iPS細胞骨格筋幹細胞の脆弱性を克服する分子のスクリーニングを行う。さらに、エクソンスキッピングにより症状軽減化を期待できる変異ジストロフィン遺伝子に対し、in vitroで効果的なエキソンスキッピングを達成するアンチセンスオリゴニュークレオチド、低分子化合物の絞り込みを行う。2)NOGマウスを用いたin vivoにおいて有効性の検証を行う。正常人iPS細胞、疾患特異的iPS細胞から作成した骨格筋幹細胞の全身への生着効果について検討し、マウス全身の骨格筋に、ヒト骨格筋が生着するヒト化マウスを作成する。3)2)で作製した骨格筋レベルでヒト化されたマウスを用い、筋ジストロフィー症由来iPS細胞骨格筋幹細胞の脆弱性を克服する分子、エクソンスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴニュークレオチド、低分子化合物について、全身の骨格筋において、その効果を確認する。
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