研究概要 |
本研究の目的はiPS細胞からミエロイド由来抑制細胞(Myeloid-derived suppressor cells; MDSC)への分化誘導ならびに細胞免疫療法の確立である。本年度の研究内容は、1.昨年度のiPS-MDSCのアロ刺激によるT細胞増殖の抑制機能がiPS-MDSCが有する結果を踏まえて、今年度はiPS-MDSCの抗原提示能および抑制機能について、未熟iPS-DCを追加して、さらに詳細に比較検討した。その結果、BM-MDSC、未熟iPS-DCより、アロ刺激によるCD4、CD8T細胞増殖の抑制機能が顕著であり、iPS-MDSCの用量に比例していた。 2.急性GvHDモデルの確立においては、B6マウス脾臓から分離したT細胞を調製し、B6D2F1マウス尾静脈に注射した。細胞移植後7日後(Day7)と14日後(Day14)に各臓器をサンプリングし、解析に用いた。ドナー由来細胞であるH2Kb陽性細胞がDay7からDay14にかけて増加し、ドナー由来T細胞、特にCD8T細胞が増殖していることが分かった。また、レシピエントマウスの各臓器に対して免疫染色を行った結果、Day7とDay14の両方においてCD4及びCD8とBrdU(細胞活性マーカー)が共発現している箇所が多く観察された。この結果からレシピエント臓器内での活性化CD4,CD8T細胞の存在が確認できた。さらに、Day14では、CTL細胞に関連するサイトカインであるPerforin、GranzymeB遺伝子の発現が上昇することが分かった。以上の結果から、B6マウス脾細胞移植によるレシピエントB6D2F1マウスへの急性GvHD誘導が確認された。今後、iPSから誘導出来た、しかもすでにin vitroで、その機能解析出来たiPS-MDSCを用いて、急性GvHD、心臓移植モデル等用いて引き続き行う予定である。
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