研究課題/領域番号 |
23659838
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
石井 暢明 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00445826)
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研究分担者 |
小川 令 日本医科大学, 医学部, 准教授 (70398866)
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キーワード | ケロイド / 肥厚性瘢痕 / カルシウムイオンチャネル / 力学的刺激 / メカノバイオロジー / シグナル伝達 |
研究概要 |
われわれは、皮膚を伸展すると、皮膚の血管新生、神経増生および細胞増殖が著明に生じることを明らかにしてきた。この伸展刺激の反復で、皮膚に神経原性炎症が生じ、また細胞が直接力学的刺激を感受して、これら生物学的な変化が皮膚や創に生じることがわかってきた。これは臨床的には肥厚性瘢痕やケロイドの組織像と一致するため、これら異常瘢痕の主要な原因の一つが皮膚の伸展である可能性を考えている。 本研究では皮膚真皮の線維芽細胞が、皮膚の伸展刺激によってどのような反応を示すか研究した。特に、いままで注目されることのなかった、細胞が伸展刺激を感受するとされるメカノレセプターの1つであるカルシウムチャネルに焦点を絞った。海外ではカルシウムイオンチャネルブロッカーはケロイドの治療薬として使用されている報告があるため、新しい治療法の開発に役立つ可能性があると考えた。 ケロイドおよび正常皮膚から線維芽細胞を採取し、細胞に伸展刺激を与えるための装置で培養した。その培養細胞の細胞増殖能、コラーゲン分泌能、各種サイトカイン・成長因子産生能を調べた。その結果、線維芽細胞を伸展することにより、ケロイドや正常皮膚から採取した細胞共にいわゆるTGFβ、WNT、TNFといった機械受容シグナル伝達系路が活性化することが判明した。一方、カルシウムイオンチャネルのシグナル伝達系路に関しては、皮膚伸展刺激においては、他のシグナル伝達系路に比べて顕著には活性化されないことが判明した。 軟骨などではカルシウムイオンチャネルが静水圧などの力学的刺激に顕著に反応することが判明しているが、皮膚ではそれほどの役割を担っていない可能性が示唆された。ただし、カルシウムイオンチャネルをブロックすることにより、細胞への直接刺激ではなく、組織や臓器を通じた生理学的な関節的作用が得られるため、今後検討を要すると考えられた。
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