研究課題
挑戦的萌芽研究
歯の保存治療の1つに意図的再植法があり、難治性の根尖病変の除去や、破折した歯の口腔外接着後の再植時に応用される治療法である。現在のところ、抜歯の際に歯根膜組織へのダメージを最小限にする以外に、再植後の治癒を促進するような薬は開発されていない。そこで本研究では、アンギオテンシノーゲンの代謝産物であるアンギオテンシン II (AngII) が、抜歯再植後の歯根膜組織の治癒に及ぼす影響について検討するために、歯牙再植実験モデルラットを作製し、その歯根膜組織の治癒に及ぼす影響と、AngII をさらに細かく分けたペプチドが歯根膜細胞に及ぼす影響について明らかにすること目的とした。その結果、AngII にて処理されたラットの歯根膜組織において、歯根膜組織中の血管形成が促進し、異所性の骨形成が抑制された。また AngII ペプチドが、未分化なヒト歯根膜細胞に対して、腱/靱帯関連遺伝子の発現を誘導し、さらに歯根膜細胞の起源である歯小嚢のマーカーの 1 つとされるトロンボスポンディン2の発現を亢進することが明らかになった。以上の結果より、意図的歯牙再植を行う際に、AngII を応用することによってアンキローシスを抑制し、歯根膜組織の治癒を促進しうる可能性が示唆された。
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