研究概要 |
寝たきりの高齢者98名を経管栄養摂取者群と経口栄養摂取者群に分けて、T-RFLP解析により舌苔細菌叢の比較を行った。 HaeIII消化の簡易T-RFLP解析パターンが、両群で大きく異なることから、細菌種構成比率の違いが推察された。そこで、より詳細な細菌叢の違いを明らかにするため、HaeIII以外のRsaI, MspIおよびHhaIの制限酵素の消化で得られた複数のT-RFLPピークパターンの組み合わせで独自に開発したコンピュータソフトによりデータを再解析した。 しかし、経管栄養摂取者に特異的に認められたTRFはいずれもHOMDに登録された口腔細菌種に対応しないことから、これらのTRFは通常の口腔細菌種に由来しないものと考えられた。そこで、パイロシーケンスによる経管栄養摂取者の舌苔細菌構成の解明を試みた。 パイロシーケンス解析の対象者には経管栄養摂取者から17名、寝たきりの経口栄養摂取者から17名を選んだ。得られたDNAシークエンスを解析した結果、経管栄養摂取者の口腔には健康な口腔において通常検出されることのないStreptococcus agalactiaeやCorynebacterium striatum が高い比率で検出されることが明らかになった。さらに呼吸器系疾患の病原性細菌と言われるHaemophilus influenzaやPseudomonas aeruginosaも経管栄養群にのみに検出されたことから、経管栄養摂取を行うことで、口腔細菌叢が大きく破綻していることが確認できた。さらに、経管栄養摂取者に特徴的な菌種と全身状態との関連性についての検討を進め、パイロシーケンスから推定される菌種の中で経管栄養摂取者に特異的に認められたいものについて、それぞれの菌種量と、サンプル採取前後一年間の発熱日数、肺炎の発症との間の関連を検討したが、単独で臨床症状に有意に関連性を示した細菌種は認められなかった。
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