研究課題/領域番号 |
23660011
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
星 美和子 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70433133)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 自己超越 / 看護師の成長 / ウェルビーイング |
研究概要 |
本研究課題は、Self-Transcendence(自己超越性)に焦点を当て、看護師の成長する過程および成長過程に影響を与える因子について、構築した中範囲理論的枠組みの検証を通して明らかにすることを目的としている。研究初年度となる平成23年度は、調査実施のための基礎固めの年と位置づけており、具体的には、理論的枠組みの構成概念の更なる精査と規定、実証的指標となる質問師の選定、そして所属機関における倫理審査申請までを実施することを計画していた。 平成23年度の具体的な研究活動として、まずは、国内外における自己超越や看護師の成長にかかわる可能性のある要因(たとえばバーンアウトなど)に関する文献を広く検討し現状について俯瞰した。また、国外の学会発表を通して、さまざまな国の研究者と意見交換を行い、脆弱性および自己超越概念や研究手法についての貴重な示唆を得ることができた。 ウェルビーイングの指標のひとつとする予定のコンピテンシーについては、日本では概念が非常に曖昧に使われているため、研究協力者とともに概念分析を実施している。しかしながら、コンピテンシーは大きな概念で、その分析に予想以上の時間がかかっており、まずは看護の高等教育におけるコンピテンシー概念の規定を目指して分析を進めている。分析結果は平成24年7月の国際学会で発表する予定である。 質問紙選定については、候補となるものを精査中で、まだ決定には至っていない。いくつかの候補については、日本語版がないため翻訳が必要となる可能性が高く、質問紙翻訳のための適切な協力者について、日本語・英語の両者に堪能な数人の了承を得ている状況である。 概念分析が進行中であり、またすべての質問紙について選定が終了していないため、当初予定していた所属機関における倫理審査申請には至っていないが、平成24年度前半で承認を得られるよう準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究が計画よりやや遅れていることについては主に二つの要因が考えられる。一つ目の要因は、本研究の根幹となる理論的枠組みにおいて、ウェルビーイングの指標として選択したコンピテンシー概念が、アンブレラ概念とも言える大きな概念であることが明らかになり、加えて日本の看護学においてその概念が曖昧なまま使用されていることおよび概念分析に耐えうる文献が少なく、国外の文献も分析対象に含める必要があったことなどから、概念分析に予想以上の時間がかかっていることである。もう一つは、研究代表者が所属機関を年度途中で移動し、その移動に伴い教育に関する業務量が短期間で急激に増加し、年度後半に予定していた研究活動を十分に行うことが困難であったことである。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度においては、まずはコンピテンシーの概念分析を終了させ、すべての構成概念の規定および実証的指標となる質問紙の選定を終了させる。その後、所属機関における倫理審査を受け研究実施に関する承認を得る。倫理審査終了後、数人の被験者によるプレテストを経て、調査実施協力を得られた施設の対象者に質問紙を配布し、郵送による回収を行うことでデータの収集をし、統計ソフトを使用したデータ分析を開始することを目指す。ただし、現在進行中の概念規定や質問紙の選定は、研究結果を左右する最も重要な過程であるため、安易に終了させるようなことはせず、十分に精査を行った上で決定し、調査を開始したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度における計画では、データ分析用に統計処理のためのコンピューターソフトや文献整理用コンピューターソフトの購入を計画していた。しかし、所属機関の移動が予定されていたため、移動先でのコンピューターソフトのライセンス契約状況を見極めてから購入を検討したいと考え、平成23年度内の統計ソフト等の購入を見送った。したがって、平成24年度にはまず、平成23年度の未使用予算で、見送ったコンピューターソフトの購入を行いたい。また、平成24年度予算では、実際の調査実施に関係する費用(印刷用紙や印刷費用、郵送費用、質問紙の翻訳協力者への謝礼など)、そして概念分析結果を国外の学会で発表し、コンピテンシーや自己超越について、より精通している国外の研究者との意見交換を行うための旅費として使用する計画を立てている。
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