研究課題/領域番号 |
23700171
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中島 悠 京都大学, 情報学研究科, 助教 (50554979)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エージェント / シミュレーション工学 / マルチエージェントシミュレーション / 都市シミュレーション / モデル化 |
研究概要 |
マルチエージェントシミュレーション(Multi-agent based simulation : MABS)は人々の行動が創り出す複雑な社会現象の再現および分析に用いられている.都市における人々の活動は多様であり,対象とする領域の面,対象とする行動の抽象度の面で異なる多くのシミュレーションが実施されている.例えば,交通,防災,社会科学など様々な分野で適用されてきている.現代社会において,交通は人々のインタラクションにより形成される複雑な社会現象の一つである.交通という一つの問題領域でも,人々の行動は異なる抽象度で捉えられる.例えば,抽象度の高い広域交通行動モデルに基づいたシミュレーションが盛んに行われている一方で,抽象度の低い運転行動モデルに基づいたシミュレーションも行われている.しかし,その異なる抽象度にまたがるシミュレーションの研究は少ない.また,交通は都市における人々の活動の基盤であり,災害時の避難,人同士の接触による疫病伝播といった他領域の問題とも深い関係がある.交通とこの様な他領域の問題は相互に関係しているが,シミュレータとして相互に補完しあうような枠組みがないのが現状である.この様なシミュレータという計算可能な形で集積される知識を再利用するために,対象とする問題領域や抽象度が異なる複数のシミュレータを統合することを目標とした研究を行った.本年度は,複数の異質なシミュレータを統合するプラットフォームのアーキテクチャを提案した.さらに,都市交通を例に,このアーキテクチャが,抽象度の異なるシミュレータの統合と問題領域の異なるシミュレータの統合を果たせる可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由により,おおむね順調に進展していると考える.本年度は,複数の異質なシミュレータを統合するプラットフォームのアーキテクチャを提案し,シミュレータプラットフォームの実装を行った.さらに,都市交通を例に,このアーキテクチャが,抽象度の異なるシミュレータの統合と問題領域の異なるシミュレータの統合を果たせる可能性を示した.
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今後の研究の推進方策 |
異種のシミュレータを統合するプラットフォームを実現するためには,シミュレータの外部制御機構が必要になる.これにより,柔軟かつ動的なシミュレーション状況の監視およびシミュレーションへの介入が可能となる.現在は,各シミュレータの独立性を高めるため,シミュレータ間をメッセージ指向で結合する方法を示した.この統合の際のインタフェースについて検討を進めたい.シミュレータを統合する際には,並列制御が重要となる.現在は,スーパーコンピュータだけでなく,一般の計算機でも,マルチCPU,マルチコア化が進んでいる.それぞれのシミュレータの独立性を維持し,それぞれのシミュレータを疎結合とすることで,多数の計算資源を活用することができる.今後は,シミュレーションの計画的で効率的な実行方法について検討したい.計画的で効率的なマルチエージェントシミュレーションの実行をできるようにすることで,マルチエージェントシミュレーションを都市システムの検証に適用する研究を進めていきたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
主に物品と書籍の購入に充てる予定である.マルチコアCPUのマシンを複数台購入して簡易的な計算機グリッドを構成し,並列・分散環境上でのシミュレーションに関する研究を行う予定である.また,この研究を進める上で,GPS機能付端末,デジタルカメラ,デジタルビデオカメラなどのセンサを購入し,現実世界の情報を計算機上に取り込むことも考えているので,必要に応じて購入する予定である.
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