研究課題/領域番号 |
23700305
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
秋元 頼孝 東北大学, 加齢医学研究所, その他 (00555245)
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キーワード | アイロニー / ポライトネス / 発話産出 / 個人特性 / 感情 / 社会的要因 |
研究概要 |
脳機能計測実験のデザインを確立するために、2種類の発話産出行動実験を実施した。第一の課題は、発話産出時にポライトネス(対人配慮)の考慮を担う神経基盤を同定するための課題である。実験参加者は、ポライトネスの概念を学習した上で発話産出課題を行った。発話産出課題では、顔写真(友人という設定)と友人がささいな失敗をした状況を説明する文が提示され、実験参加者は、「積極的ポライトネス」「消極的ポライトネス」「ポライトネスなし」のいずれかの条件で発話産出を行った。第二の課題は、アイロニー産出を担う神経基盤を明らかにするための課題である。実験の手続きは、アイロニーもしくは字義的発話を産出するように指示する以外は、課題1と同様の手続きであった。いずれの課題についても、発話内容および発話産出開始・終了までの時間を記録した。また、質問紙を用いて社会的スキルなどの個人特性についても測定した。産出された発話をテキストに書き起こした後、どの条件で発話されたのかを伏せた上で、別の実験参加者による評定実験を実施した。 実験手続きの改善を繰り返した結果、実験参加者が適切に課題を行える実験デザインの確立に成功した。また、(1)ポライトネスを考慮した発話の産出に時間を要する、(2)アイロニー産出は字義的発話の産出よりも時間を要する、(3)アイロニー産出のコストは、実験参加者のアサーティブネス(自分の権利を守り他人の権利も尊重しながらも無理なく自分の思いを素直に表現する社会的スキル)の得点と負の相関を示すなどの結果も得られた。これらの結果は、アイロニーが相手に配慮しつつも自分の感情的態度を伝えるという目的を達成するために使われている可能性を示唆しており、脳機能計測実験で整合的な結果が得られるか興味深い点だと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた実験デザインで予備的な行動実験を行った結果、いくつかの問題が発覚したことから、脳機能計測実験を延期して実験デザインの再構築を行ったため。現在は全ての問題を解決しており、fMRI実験・MEG実験とも問題なく以降の研究計画を推進することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、ポライトネス発話産出課題を用いてfMRI実験を行う。解析では、(積極的ポライトネス+消極的ポライトネスー2×ポライトネスなし)、(積極的ポライトネス-消極的ポライトネス)、(消極的ポライトネス-積極的ポライトネス)のコントラストを評価することで、発話産出時におけるポライトネスの考慮を担う神経基盤を同定する。また、被験者の感情調整能力や社会的スキルについても心理尺度を用いて測定し、それに応じて活動が変化する脳領域についても検討を行う。被験者は健常な大学生・大学院生の男女それぞれ20人ずつを予定している。 次に、アイロニー産出課題を用いてMEG実験を行う。解析では、確立済みの手法を用いて、信号源レベルでの集団解析を行い、アイロニー産出における脳活動を時空間的側面から明らかにする。同様に、被験者の感情調整能力や社会的スキルと脳活動との関係についても検討を行う。さらに、先述のfMRI実験で同定した領域を関心領域として解析を行うことで、アイロニー産出とポライトネスの関係を脳科学的側面から検証する。被験者は健常な大学生・大学院生の男女それぞれ20人ずつを予定している。 最後に、アイロニー産出のメカニズムとその社会的機能との関係について、心理学的および脳科学的見地から研究の総括を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初計画していた脳機能計測実験を次年度に延期することによって生じたものであり、延期した脳機能計測実験の被験者謝金に必要な経費として、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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