研究課題
最終年度は、前年度に実施した脳機能計測実験のデータ解析を完了させ、学会での成果発表・議論を通じて考察を深めた。研究期間全体の成果として、アイロニー産出には(1)感情的要因や社会的スキルの個人差が関係しており、(2)ユーモアによるポジティブポライトネスの伝達という目的が含まれていること、(3)字義的発話を産出するよりも処理時間を要すること、(4)アイロニー理解に関与する脳領域である内側前頭前野および右側頭葉前部が産出の際にも関与する(アルファ帯域のパワーの減少)ことが示された。さらに、(5)発話産出におけるポライトネスの考慮には眼窩前頭皮質が関与し、特に右外側眼窩前頭皮質後部は、ポジティブポライトネス・ネガティブポライトネスのいずれの場合にも関与することも示された。また、MEGを用いた発話産出実験を行う前の基礎実験として視覚的オドボール課題を実施し、注意ネットワークにおける高ガンマ帯域(52~100Hz)のパワーおよびコヒーレンスの個人差が、反応時間の個人差と相関するという知見も得た。本研究成果は、アイロニーのような高次の発話産出の脳メカニズムを初めて明らかにした先駆的なものであり、重要な意義をもつ。行動指標を用いた高次の発話産出メカニズムの実験的検討は極めて難しく、有力な認知モデルや有効な実験パラダイムは確立していない中で、本研究が脳機能計測法による検討の有用性を示したことにより、今後の大きな研究の進展が期待できる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Neuroimage
巻: 100C ページ: 290-300
10.1016/j.neuroimage.2014.06.037.