研究課題/領域番号 |
23700715
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
井田 博史 東京工業大学, 社会理工学研究科, 東工大特別研究員 (20392194)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 知覚―動作カップリング / 3D呈示 / 実在感 / 両眼視差 / ヴァーチャル環境 / CAVE / 捕捉行動 / 動作解析 |
研究概要 |
本研究課題では,ヴァーチャル環境(VE)の3D呈示が使用者に与える実在感について,捕捉行動における動作の分析から明らかにすることを主目的とし,また使用する没入型VE装置(CAVE)の利点・不利点の検証を副目的として掲げている.この目的に向けて,段階的に3つの到達目標(目標(1):CAVEにおける刺激呈示系および動作計測系の構築,目標(2):3D呈示と2D呈示の映像呈示実験とデータ解析,目標(3):参照用の実空間実験とデータ解析)が設定された.初年度(平成23年度)は,目標(1)の達成および目標(2)の準備が予定され,さらに目標(2)の本実験についても一部実施するように計画された.目標(1)のうち,CAVEにおける刺激呈示系の構築に関しては概ね完了したものの,動作計測系の構築については機材調達などを含めて一部24年度へ持ち越した.しかしながら,構築された刺激呈示系を用いて,VEの呈示条件と使用者の擬似捕球パフォーマンスとの関係を調べる実験を完了した.さらにこのVE擬似捕球課題を実空間上で近似的に再現し,VEでの擬似捕球スキルと実空間での実捕球スキルとの関係性について調べる実験を実施した.VE実験では,CAVEにおける擬似捕球パフォーマンスを,低速,中速,高速の各ボールスピード条件について,2D呈示と3D呈示の呈示条件間で比較を行った.その結果,中速条件において,2D呈示より3D呈示の方が擬似捕球成功率を向上させることが示され,3D呈示の両眼視差によって運動パフォーマンスが影響を受けることを示唆するものであった.またVEでの擬似捕球成功率と実空間での実捕球成功率に相関関係が確認され,VEでの運動行動結果から個人の実際の運動スキルが推定できる可能性を示唆するものであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況は概ね順調である.平成23年度内に完了する見込みであった「目標(1):CAVEにおける刺激呈示系および動作計測系の構築」に関しては,動作計測関係の機材購入を一部平成24年度に持ち越したものの,全体としては順調であった.また,目標(2):3D呈示と2D呈示の映像呈示実験とデータ解析」および「目標(3):参照用の実空間実験とデータ解析」に関しては,一部実験を前倒しして平成23年度に実施し,予定より若干早く進行している.得られた実験結果は,本研究課題に対して多くの示唆を含んだものであったため,これらの結果の一部については先行して成果の公開を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
「目標(1):CAVEにおける刺激呈示系および動作計測系の構築」に関しては,予定を超過している動作計測系構築について,必要物品の導入を進めつつ平成24年度内の完了を目指す.また,「目標(2):3D呈示と2D呈示の映像呈示実験とデータ解析」については,すでに完了した一部実験の成果公開を進め,目標(1)の実験系準備が整い次第,当初予定の動作計測系を組み込んだ擬似捕球課題実験を開始する.「目標(3):参照用の実空間実験とデータ解析」についても,目標(2)の補足結果として成果を公開し,これと並行して平成24年度内に動作計測実験の開始を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は,研究費交付に関して減額執行の可能性があったため,物品の購入は先送りにして,現状の機材で可能な実験の遂行に注力することにした.平成23年度未使用分に関しては,当初から配分が予定されている平成24年度物品費と合わせて,主に計測装置および解析ソフトウェアの物品費に充てる.それ以外の,旅費,人件費・謝金,その他の各費目別研究費は,概ね当初の予定通り使用する見込みである.
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