研究概要 |
本研究課題では,ヴァーチャル環境(VE)の3D呈示が使用者に与える実在感について,捕捉行動における動作の分析から明らかにすることを主目的とし,また使用する没入型VE装置(CAVE)の利点・不利点の検証を副目的として掲げている.この目的に向けて,段階的に3つの到達目標(目標①:CAVEにおける刺激呈示系および動作計測系の構築,目標②:3D呈示と2D呈示の映像呈示実験とデータ解析,目標③:参照用の実空間実験とデータ解析)が設定された.第3年度(平成25年度)は当初,主に目標②および③に関する実験データの解析および結果のまとめ,また得られた成果の公開が計画されていたが,初年度および第2年度の進捗状況に変更があったため,到達目標を一部拡張・修正した. CAVEにおけるインターセプト課題実験は,当初の予定どおり概ね平成24年度までに完了し,平成25年度は得られた成果の公開と社会への発信を進めていった.特に,3D呈示が2D呈示と比べて,主観的印象評価には差がないにもかかわらず捕球課題成功率を向上させたという結果は,飛来物体の両眼性奥行き手がかりが無意識的にヒトの動作を変容させることを示唆する.この結果は,原著論文としてまとめられ,学術論文誌での掲載が確定した(井田ら,印刷中,スポ心研究). 一方,当初の計画では予定されていなかったが,研究課題期間中に新たな関連共同研究が発足し,平成24年度後半から平成25年度にかけて,実験の実施および結果のまとめが行われた.具体的には,VEにおいては衝突回避行動中の姿勢調節機序が実環境と異なることが示され,その結果は学会大会において発表された(Ida et al., 2013, ISPGR).これらの研究については,今後データを補足して,学術論文誌での成果公開を目指す.
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