本研究の目的は、高齢者の足関節底屈・背屈動作の動作不全のメカニズムを明らかにすることであった。高齢者においても、足関節底屈時における腓腹筋の筋束変化に対する踵骨移動の増幅作用を有するが、その程度は若年者よりも小さかった。増幅作用の年齢差は、アキレス腱-踵骨の部位において顕著であり、その要因の一つとしてアキレス腱の湾曲度合いの相違が考えられた。このことから、高齢者の足関節底屈動作の可動範囲の狭さは、筋や腱のstiffness(剛性=変形のしづらさ)が小さいだけでなく、アキレス腱湾曲の低さに伴う踵骨変位量の小ささも関与していることが示された。
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