本研究では,ICTを活用した日本語教員養成のための学習環境のデザインとその評価を行った.学生の実践的スキルの習得を目的とし,体験と内省の両側面を支援する学習環境を先行研究に基づいてデザインし,2011年度にデザインされた学習環境で実践を行い,事例を分析することで学習環境の要件を整理した. 2012年度は,2011年度の実践の課題を整理し,先行研究をもとに実践の再デザインを行った.具体的には,2011年度の実践結果,日本語指導に対する学習観」の違いによって,体験と内省の学習モデルに違いがみられること,そして,「つまずきの要因の解釈」の違いによって体験と内省の学習モデルに違いがみられたことがわかった.以上の分析結果から得られた知見をもとに,2012年度では(a)学習観の理解促進とそれに基づいた実践支援,(b)体験の何をどのように内省するかの指導の2つの要件をデザインに埋め込み,実践を行った. 再デザインされた学習環境おいて,前年度と同様に,京都外国語大学(京都外大)の日本語学科の学生と米国ホノルル市カピオラニ・コミュニティカレッジ(KCC)およびタイのピブンソンクラームラチャパット大学(PSRU)間で日本語を学習する学生との間で行われる日本語教育実践事例を分析した. 分析段階では,京都外大の学生が実際の日本語教育で必要とされる実践的スキルを習得できたか,KCCの学生が日本人と日本語で会話を継続的に行うことで日本語活用力を向上させたか,という観点から学習環境を評価し,改善した.デザイン実験アプローチに基づき,デザイン-実施-評価-改善のプロセスを2年間継続して実施した結果をもとに,最終的に,ICTを活用した日本語教員養成のための学習環境デザインのガイドラインを書籍および論文にまとめ提示した.
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