研究課題/領域番号 |
23720057
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
彬子女王 立命館大学, 衣笠総合研究機構, ポストドクトラルフェロー (20571889)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / 日英文化交流 / 日本美術コレクション史 / 大英博物館 |
研究概要 |
本年度は、2011年11月7-22日にかけてロンドンに滞在し、大英博物館において、作品およびアーカイブの調査を行った。 アジア部日本セクション長のティム・クラーク氏の指導の下、版画・素描部に保管されている20世紀初頭の部局の議事録から日本関連の記載を抜き出す作業を行った。特に、1903年に所蔵された《女史箴図巻》の複製を、1902年の日英博覧会での日本版画のデモンストレーションのために滞在していた杉崎秀明と漆原由次郎に依頼し、1913年に納められるまでの経緯が詳細に明らかになったのは大変意義深かった。日英交流史、日本の版画技術の海外における評価の高さ、日本と中国絵画のヨーロッパにおける位置づけなどを知るうえで重要な史料になると思われる。 また、お雇い外国人として日本に滞在し、日本全国の古墳の調査を行ったウィリアム・ガウランドが撮影した古墳の写真の調査、リスト化を行った。これは今まで未整理のまま日本セクションの図書館に保管されていた資料である。今では調査が不可能となった古墳の写真や測量記録などが残されており、考古学的にも貴重な史料である。今後研究が進むと思われる。 さらに、館蔵品データベースで1910年代から50年代までの日本関連の収蔵品を検索し、リスト化した。デパートメントの収蔵品登録簿や議事録との照合作業までは行うことができなかったので、次年度以降の課題とし、大英博物館の日本コレクションの全容の把握に努めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来、大英博物館によって蒐集された、1910年代以降の日本関連作品およびアーカイブの調査をする予定だったが、1890年代以降1900年代初頭までの関連資料で未調査のものがいくつかあり、そちらの調査にやや時間を要した。また、ウィリアム・ガウランドの資料の整理は想定外であったが、それほど大きな時間のロスはなかったと感じている。 大英博物館の館蔵品データベースの情報量が以前より増しており、データベースの検索をすることで得られる情報の正確さも上がってきているように思われた。収蔵品を検索、分類することでわかる大まかな傾向から、時代ごとの蒐集方針などの感触はつかむことができた。しかし、それを実証するまでには至っていないので、次年度は蒐集の背景を明らかにするための史料の調査を進めて行く予定である。当初、収蔵品の把握と共に、並行して行う予定であった寄贈者や美術商の調査は手薄になってしまったので、次年度以降の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、今年度と同様に大英博物館における長期の調査(1ヶ月程度を想定している)を行う予定である。今年度は収蔵品のリスト化の作業がだいぶ進んだので、次年度以降は寄贈者や美術商等の調査など、もう少し収蔵品の来歴の詳細を明らかにするための研究に徐々に移行していく予定である。アジア部日本セクションの史料を中心に調査を進めるが、理事会の議事録や、日本専門のデパートメントができるまで日本作品を収蔵していた、版画・素描部、民俗学部の登録簿や議事録の調査も引き続き行い、大英博物館全体やデパートメントの蒐集方針の研究も合わせて行っていく。 大英博物館以外でも、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館や大英図書館、ナショナル・アート・ライブラリーに所蔵されている日本美術関連の資料を調査し、当時の大英博物館を取り巻く日本研究者や日本美術蒐集家たちの動向や、彼らの研究の傾向などの研究も進めていけたらと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も、大英博物館での調査を予定している。ロンドンでの長期滞在に関わる往復の航空券代、宿泊費、および諸経費に研究費を利用する予定である。英国の調査以外での直接経費の利用は、関連書籍の購入以外では想定していない。
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