本年度は、英国の大英博物館に約3週間にわたって滞在し、所蔵資料の調査を行った。 最初に取り組んだのは、1890年代から1990年代に、大英博物館で開催された日本関係の展覧会関連の資料(展示品目録、プレスリリース、解説のリーフレット等)が納められた収納ケースの調査である。ほとんどの資料をスキャニングし、データ保存した。 興味深かったのは、19世紀後半から20世紀初頭は、「日本美術」「浮世絵」など大きなくくりの展覧会が多く、作品を蒐集した人物の意向が反映されているのに比べ、20世紀後半以降は、「根付」「美人画」など内容が細分化されていくことがわかったことである。大英博物館における、日本美術に対する理解が進むことと比例するようにして、展覧会の内容も深化していたことが明らかになった。 また、並行して、1960年代に行われた浮世絵の特別展の展示計画に書かれた所蔵品番号を、現存の所蔵品データベースと照らし合わせ、ほとんどの作品を特定することができた。ウィリアム・アンダーソンやアーサー・モリソン等、大英博物館の日本美術コレクションの核を形成した、19世紀の大コレクターのコレクションをベースにしながら、新規の収蔵品でそれを補完する形で、中には新しく大英博物館が購入した作品も含まれている。17-18世紀の浮世絵の最盛期の時代を、主要な絵師の作品で概観するような構成になっており、当時の浮世絵史に関する理解が、現代の理解とかなり近いものであることがわかった。
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