研究課題/領域番号 |
23720118
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
小林 ふみ子 法政大学, 文学部, 准教授 (00386335)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 狂歌 / 目録化 |
研究概要 |
今年度は、まずこれまでに自身で作成してきた狂歌本の書誌データ(ソウル大学校・聖心女子大学図書館・東大国文学研究室の各蔵本など)、中野真作氏が長年にわたって作成されてきた諸機関での所見本の書誌の記録と、一般に公開されているデータベース類(国文学研究資料館の日本古典籍総合データベースや大妻女子大学図書館のOPAC、慶應義塾大学図書館のデータ等)にみえる狂歌本情報を対照し、目録としてどのような要素を取りえるのか検討するとともに、今後必要な作業を見積もった。その結果、項目を絞っても狂歌本の網羅的な書目一覧を今後4年間で完成することの困難が判明したが、絞り込んだ項目を共通のフォームとして、茶梅亭文庫蔵本や手許の書誌情報などを入力しつつある。狂歌本の書誌調査の過程で得られた研究成果として、刊記が書誌名のみで刊年が未確定であった北斎描く狂歌絵本の傑作『絵本隅田川両岸一覧』の刊行時期をめぐる新知見がある。従来未検討であった編者壺十楼成安をはじめ狂歌師の側からの調査によって、これまで推測されてきたのよりも約十年遅いということを明らかにしえた。これについては「北斎画『絵本隅田川両岸一覧』の刊年をめぐって」としてまとめ、本年5月に刊行される論文集『詩歌とイメージ』に掲載する予定で校正を進めている段階にある。その他、新宿歴史博物館平成23年度特別展「蜀山人大田南畝と江戸のまち」に協力し、狂歌本についての知見を提供した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度、『狂歌書目総覧』作成作業に着手にあたって、あらためてさまざまな問題点があることが判ってきた。最大の困難は、使用を想定していた既存データの精度や項目のばらつきが予想以上に大きいこと、また茶梅亭文庫の所蔵者である中野真作氏が長年集められてきた書誌データの活用を考えていたが、それを電子データ化するのが困難であり、手入力に頼らざるを得ないこと、「狂歌書目総覧」とするには情報を欠く作品がかなりあるということ、また協力者として考えていた研究者の多忙である。今年度の模索の結果、あらためてスタート地点に立ったというほかない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
4年間という研究期間に一定の成果を出すためにも、対象をいくつかに絞って、共通項目でその目録化を図り、将来的にデータを統合してゆく土台としたい。具体的には、(1)茶梅亭文庫蔵書目 (2)江戸狂歌書目(ただし、文化期が限度か)の2つで、これを共通のフォーマットで作成する。(1)については中野真作氏作成の書誌を元に公開できるかたちに整備する。(2)については手許の書誌調査記録をもとに、不足を補いつつ、公開できるかたちに整備する。
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次年度の研究費の使用計画 |
大阪の茶梅亭文庫、また必要に応じて各地の所蔵機関で調査を行うために一定額を旅費に充てる。作業の効率化のため、正確にデータを入力してくれる人手の確保につとめ、謝金として一定額を支出し、残りを必要な資料の購入費とする。
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