研究課題/領域番号 |
23720429
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
福武 慎太郎 上智大学, 外国語学部, 准教授 (80439330)
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キーワード | 東ティモール |
研究概要 |
東ティモール民主共和国において実施したキリスト教宣教活動の経緯に関する現地調査により、東ティモールにおける言語状況への影響と、ポルトガル領時代にカトリックへの改宗が進まなかった歴史的背景を確認した。 イエズス会をはじめとするカトリック宣教は19世紀後半から本格的にはじまった。しかしポルトガル本国の共和制移行により、ポルトガル領内での宣教活動が禁じられ、修道会はポルトガル領から1960年代半ばまで締め出されることになった。これがポルトガル領時代にカトリックへの改宗が進まなかった主たる要因である。 他方、インドネシア時代に、その宗教政策によりカトリックへの改宗が急速に進んだ。そしてカトリック教会がその典礼言語にテトゥン語を採用したことにより、主にテトゥン語をリンガ・フランカとする地域においてカトリック文化が根付き、非テトゥン語圏ではそれほどでもなかったことが確認された。これが、現在の東ティモール民主共和国内における「東」と「西」の文化的、言語的差異の要因と考えられる。 今年度の調査研究により東ティモールのナショナリズムの言語と宗教との関連を考える上で重要な示唆を得た。これらの成果を元に、「難民と十字架─ティモール島─ティモール島における宗教と言語の位相からみた国境問題」と題し執筆し、現在推敲段階にある。またティモール社会の民族誌的研究に関する単著の準備を進めている段階にある。インドネシアと東ティモール間の国境と難民問題については、「自主避難のエスノグラフィー─東ティモールの独立紛争と福島第一原発事故をめぐる移動と定住の人類学」赤嶺淳編『グローバル社会を歩く─かかわりの人間文化学』(辰巳頼子との共著)として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本務校における公務出張が急遽はいったことに加え、妻の出産と育児サポートにより、海外出張による調査研究がやや遅れている。そのため研究計画を一年延長し、平成25年度中に東ティモールにおける調査研究を再度実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
25年度8月に東ティモール民主共和国における現地調査を2週間の日程で予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
東ティモール民主共和国において8月に実施予定の現地調査の際の、調査協力者への旅費として使用する計画である。
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