研究課題/領域番号 |
23720432
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
磯野 真穂 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (50549376)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 医療人類学 / 薬 / 循環器疾患 / 漢方 |
研究概要 |
本研究の目的は循環器疾患と漢方外来の診察の陪席を通じて、医療現場で病気がどのように意味づけられるのかを医療人類学の視点から明らかにすることである。 当事者が行う病気の意味づけについての医療人類学的な報告はすでに数多くある存在する。しかし病気の当事者へのインタビューだけでなく、医療人類学者が診察に陪席し、そのデータを合わせて分析をした研究は数少ない。この点で本研究の意義は高い。 2010年秋より始めた予備調査で、処方薬に対する意味づけが医師と患者で異なり、それが患者の服薬ノンアドヒランスにつながっていることが判明した。したがって、2011年からは処方薬を医師と患者の結節点と見立て、処方薬に対する意味づけのずれを分析するという形で焦点を絞って研究を進めた。また調査施設での榊原記念病院の倫理委員会の通過を受け、2011年冬からは、漢方外来に加え、循環器外来での患者へのインタビューが可能となった。これによって、より包括的なデータの分析が可能となった。 処方薬に焦点を絞ったことで、本研究は服薬ノンアドヒランスと深いかかわりを持つこととなった。服薬ノンアドヒランスは、すでに多くの調査が行われているが、その多くは統計調査である。統計調査はマス単位の結果を出すには適しているが、尺度作成のために、個々の生きる社会的背景を捨象する。このため、統計調査では、それぞれがどのようなプロセスでノンアドヒランスに至るのかを示すことができない。これまでの調査で、患者がノンアドヒランスに至る過程は複雑で多様であることが判明している。今後さらなる調査を進め、統計調査では見出し得ない服薬ノンアドヒランスの要因を体系的に示すことを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年3月の時点で、陪席回数はすでに350回を超え、また患者へのインタビュー回数も40回に達した。またデータを集めただけでなく、2回の学会発表と1回の研究会での報告、さらには研究報告書も1本提出した。加えて、自身のホームページを通じて一般へ向けた成果の公表を行っている。したがって調査中盤としての成果公表は潤腸と言える。 また質的調査では研究対象者との良好なラポールの構築が際めて重要となる。1年にわたる、継続的な調査を続けることで、同一患者の複数回の診察の陪席とインタビューが可能となった。これにより患者との良好な信頼関係も徐々に確立されつつある。また研究施設の医師も本研究に対して関心を示してくれており、さらなる研究を進めるにも支障はない。 これらの理由により、本研究は極めて順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査で同一患者の複数の陪席とインタビューが可能となった。これによってマス単位のデータだけでなく、個別のデータ量も増加している。今後の調査では特に後者に重点を絞り、時間的経過の中で個々の患者の語りや医師の対応がどのように変わるのかに注目する。先行研究では見出し得なかったノンアドヒランスの要因を探り、それを体系的に示すことを目指したい。また当該年度は学会での発表が中心となったため、学術論文として成果を公表することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、個別インタビューを中心に調査を進める予定である。したがってインタビューのテープ起こしのために研究費を利用する。成果報告の一環として論文投稿を行う予定である。したがって文献購入と英文校閲にも研究費を用いる。また申請者のホームページにも結果を掲載し、成果を広く一般に公開する予定である。そのための撮影用にカメラを購入する予定である。
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