エビデンス・ベイスド・メディスンが我が国に導入されすでに10余年が経過した。エビデンスはいまや「確かさ」の根拠として、ガイドラインや医療制度の策定に利用されている。ひるがえって医療機関を訪れる患者が自らの疾患理解や進行中の治療が確かなものであるという確信をいかに得るのかは不明瞭なままである。したがって本研究は患者が「確かさ」を獲得するプロセスを循環器外来と漢方外来におけるエスノグラフィーを通じて明らかにすることを目指した。結果、患者の確かさはエビデンスベースではなく、医療者と患者の間で紡がれるナラティブと患者のうちに起る身体感覚の中で日々作られ改変される流動的なものであることが判明した。
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