本研究では、投資条約仲裁における請求主体の制約について、「濫用」に基づく制約および「実効的国籍」に基づく制約を検討した。 このうち「濫用」を根拠とする請求主体の制約は、その投資事業を行う会社の設立に関する濫用(実体的権利濫用)と請求を提起することの濫用(手続濫用)という形で主張されるが、「濫用」にあたるか否かについて、仲裁事例において基準が示されているものの必ずしも明確な基準とはいえない状況にある。そこで、「濫用」に変わり、「基準時」による請求主体の制約という形で時間という明確な基準を用いることを提案する。「実効的国籍」についてはとくに「利益否認条項」との関係から検討を行った。
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