小売業者が選択する小売業態は、小売業者のマーケティング戦略を規定する点で個別経営的に重要なだけでなく、大量生産と大量消費を効率的に結びつける点で社会経済的に重要な意義を持つ。しかし、小売業態の歴史的な盛衰を計量的に把握する試みはこれまで希少であった。そこで本研究は、50年に及ぶ小売業態の発展経路を把握するべく、パネルデータセットを構築して、計量的な分析を行った。その結果、低価格小売業者として参入した小売業者が時間の経過と共に価格とサービス水準を高めていく格上げ (trading-up) だけでなく、価格を低めつつサービス水準を高めるという持続的イノベーションも行われていることが分かった。
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