本研究では、細則主義(rule-based)に基づく会計基準から原則主義(principle-based)に基づく会計基準に変化したときに、監査人はどのように対応するのかという問題を取り上げ、そもそも原則主義の下で監査人はどのような行動をとるのかを欧州事例を対象に検討した。本研究で得られた結論としては、まず原則主義の下での監査人の行動を検討し、監査人が実際には何らかの基準・規範(会計基準、明示的・暗黙的規範、業界内の判断の拠り所)に依拠して行動することを実証分析により示している。次に、IFRSの導入により監査人の裁量が拡大し、監査人にとっての大きな負担になるという見方に対して、実際には監査人は何らかの基準・規範に依拠するために、IFRSの導入によっても、監査人が実際にその裁量を行使するわけではなく、監査人側が基準や規範を設定することでその責任の拡大を回避しようとすることを明らかにした。
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