本研究は、制度や実践としての公正価値会計がいかに普及してきたのか、批判的かつ社会学的に考察することを目的とするものであった。まず公正価値会計に関する制度(会計基準等)に着目し、その普及・拡大が近年大きく進展してきた点を浮き彫りにした。さらに、実際に公正価値会計の現場で何が行われ、どのような問題点があるのか、特に金融危機時における状況を参考に考察を進めた。その結果、特に金融危機時に市場が普通ではない状況下における、複雑に仕組まれた金融商品の公正価値会計に関して、モデルやソフトウェアやデータベースに頼らざるを得なかった理由から、十分に必要な情報が市場で共有されていなかった問題点を指摘した。この点は制度的枠組みとして、何らかの対処が必要であると考えられる。
|