研究課題/領域番号 |
23740051
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
五味 清紀 信州大学, 理学部, 准教授 (00543109)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | ねじれK理論 / Hermite一般ベクトル束 |
研究概要 |
初年度である平成23年度は、「3次元U(1) Chern-Simons理論において位相的量子場の理論の拡張となるような圏がどう構成されるべきか」を研究する計画であった。すでにこの圏の候補として、「ねじれHermite一般ベクトル束」のなす圏を用いることが念頭にあり、このアイデアがうまくいくかどうかを研究した。結果としては、「不十分」であることがわかった。もう少し言えば、出てきてほしいと期待している圏よりも、写像が多すぎる。従って、例えば、一つの対象に対して、自己同型写像のなす群が、期待しているものよりも大きすぎるということになる。この「不十分」さを改善するために、「幾何的な情報」を用いる方法を現在は模索している。すなわち、ねじれHermite一般ベクトル束とともに「接続」も考えることで、ありうべき写像を制限しようという方法である。ねじれHermite一般ベクトル束のホモトピー類全体を考えると、ねじれK理論を与える。さらに、その上の接続を用いることで、ねじれK理論からねじれde Rhamコホモロジーへの写像として、Chern指標が構成できる。このChern指標が実数をテンソル積した後で同型を誘導するという主張の証明を与えたのは、研究実績の一つである。この主張そのものは、他の方法でねじれK理論を構成する場合には既に証明されており、主張自体に真新しさはない。しかし、ねじれHermite一般ベクトル束を応用するという目論見のもと、この主張を他の構成を経由しないで証明することには意味がある。ねじれHermite一般ベクトル束の観点からこの主張を証明するためには、それらを滑らかな圏で考えているのか、連続な圏で考えているのかをはっきりと区別する必要が出てくる。これらは本質的に区別する必要がないことをきちんと証明することが、上記の主張を証明する中で一番大切なことであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
もともとの計画ではじめに解決すべきと目標にしていた問題が、当初想定した程容易ではなかった点があげられる。すなわち、Chern-Simons理論において位相的量子場の理論の拡張を構成する上で、基盤となるべき圏として、「ねじれHermite一般ベクトル束」の圏を想定していた。しかし、この圏を単純に考えるだけでは不十分であり、何らかの付加構造を考慮に入れる必要であると判明した。一方で、この接続についての研究は進展している。すなわち、この接続を用いて構成されるChern指標が、実係数上でねじれK理論とねじれde Rhamコホモロジーの同型を満たすことを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
U(1) Chern-Simons理論の場合をまず考えて、幾何的量子化の圏化に相当するものをかたづくろうという、大筋の方針は変えない予定である。難しさがあるとわかった点、すなわち、ねじれHermite一般ベクトル束のなす圏を考えるだけでは写像が多すぎるという点を、主要な問題ととらえている。この問題に対する解答を与えるためのアイデアの一つは、ねじれHermite一般ベクトル束の接続を考えることである。
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次年度の研究費の使用計画 |
国内外の研究者との研究打ち合わせのために旅費等を使用する予定である。また研究遂行上必要な知識を得るために、書籍を購入する予定である。当初計画では、海外出張を本年度実施予定であったが、研究の進捗状況により、次年度実施することになったため、次年度使用額が生じた。
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