研究課題/領域番号 |
23740051
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
五味 清紀 信州大学, 理学部, 准教授 (00543109)
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キーワード | ねじれK理論 / 位相的T双対 / 位相的絶縁体 / 実ベクトル束 / 四元数ベクトル束 / FKMM不変量 |
研究概要 |
ねじれK理論を考えることが本質的な役割を果たす数学的現象として、位相的T双対と呼ばれる現象がある。この現象はもともと超弦理論におけるT双対に起源を持っている。超弦理論には様々なバリエーションがあるが、そのうちで軌道体理論に関わるものを関係づけるT双対が存在する。このT双対に動機づけられて、二次巡回群作用についてのねじれK理論とその変種について、位相的T双対が成立することを証明した。この位相的T双対は、群作用がない場合の最も基本的なT双対の一般化になっているとともに、David Baragliaによって考えられていたT双対に関する結果を特別な場合として含むものである。 上記の研究実績の他に、「実」ベクトル束および「四元数」ベクトル束の分類を上げることができる。この結果は、位相的絶縁体の分類においてAIおよびAIIと呼ばれるクラスの量子系の記述に密接に関係する。位相的絶縁体の文脈において現れる時間反転対称性を持つ球面およびトーラス上の次元が4以下の場合を考え、ホモトピー論における議論を応用することで、上記のベクトル束を分類することに成功した。この分類は対応するK理論による分類よりも精密な分類ではあるが、K理論による分類との差はない、という結論が我々の結果から導かれる。「四元数」ベクトル束の分類に際しては、古田・亀谷・松江・南が2000年前後に導入した不変量(FKMM不変量)を用いている。(なお、この研究実績は本研究課題の一環として得られたものであるが、研究計画時には予定していなかったGiuseppe De Nittisとの共同研究の結果として得られたものである。)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
同変ねじれK理論がその同型類を分類するような圏を構成することが研究の主要なステップであるが、この圏の構成に想定以上に手こずっている。 しかしながら、同変ねじれK理論のT双対に関する研究実績は、そのような圏の構成に向けて役に立つ知見であろう。また、同様な圏の構成の問題は、位相的絶縁体のAIおよびAII以外のクラスに関わるK理論でも見られると推定でき、これらに関連するK理論の研究も決して無駄にはなっていない。
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今後の研究の推進方策 |
蓄積された知見をもとに、引き続き、上で述べた圏の構成を探る。具体的な対策として、同様の問題を共有するK理論のクラスを調べることが、有効なステップではないのかと考えている。例えば、そのような圏が持つべき性質として、研究実績として記述した位相的T双対と矛盾があってはならない。位相的T双対に関する知見の蓄積により、ありうべき圏の性質として持つべき性質が限定されてくる筈である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた研究打ち合わせが次年度に延期されたため、次年度使用額が生じた。 繰り越された次年度使用額については、延期された研究打ち合わせを行うために用いる計画である。それ以外については、当初の計画通りに、研究打ち合わせや成果発表の他、書籍などの物品費等の購入に充てる計画である。
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