研究課題/領域番号 |
23760578
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
西成 典久 香川大学, 経済学部, 准教授 (90550111)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 都市計画遺産 / 都市計画史 / Planning Heritage / Planning History / 地方都市 / 高松 |
研究概要 |
本研究の目的は、近代期の地方都市・高松を対象として、法定都市計画が高松の都市空間形成にどのような役割を果たしてきたのかを詳細に位置づけ、これまで顧みられることが少なかった近代期の都市計画がつくりあげた都市空間の歴史的・遺産的価値を探求することである。本研究では、近代都市計画によって形成された都市空間を「都市計画遺産」というキー概念で示し、そうした空間の現代的・保全的活用について考察することも視野に入れている。初年度は、明治以降戦災復興期までの高松の法定都市計画事業をリスト化し、それぞれの計画内容や計画主体、事業間の関連性など、法定都市計画で事業化された地区の具体的内容を把握することを目標とした。具体的には、以下の点に注力した。・明治以降戦災復興期までの史料(文書、行政資料、図面、写真)収集およびリスト化 当初は主要な史料として『高松市戦災復興誌』『高松復興都市計画図』『焼失地域図』『高松空襲戦災誌』などを確認しているが、戦時中あるいは戦後直後の史料は県の公文書館に保存されている可能性があるため、公文書館の協力を仰ぎ、復興当時の史料を発掘した。また、戦前の史料として『高松港修築工事施行概要』『高松都市計画街路事業概要』などが確認できており、これらに類する史料を発掘した。戦前高松の史料は、その多くが戦災で焼けており、収集には困難をきたしたが、全国の古書店を調査し、高松の都市計画史に関連する史料を収集した。また、国立公文書館での史料収集も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、明治以降戦災復興期までの高松の法定都市計画事業をリスト化し、それぞれの計画内容や計画主体、事業間の関連性など、法定都市計画で事業化された地区の具体的内容を把握することを目標とした。 県内の図書館や国会図書館、全国の古書店にて広く高松都市計画史に関連する史料を収集し、おおむね順調に進展していると考えているが、以下の点が初年度計画より遅れているため、収集した史料を読み込み、分析するスピードを上げる必要があると考えている。・明治以降戦災復興期までの法定都市計画事業のリスト化および事業内容の解明 史料収集と同調して、高松で行われた法定都市計画事業のリスト化を進めていく。そのうえで、それぞれの計画内容や計画主体、事業間の関連性など、法定都市計画で事業化された地区の具体的内容を把握する。特に、戦前は内務省の都市計画委員会技師が計画の骨子を作成しており、中央および全国の内務省都市計画委員会の組織との比較から、高松都市計画の特徴を浮き彫りとしていく。戦災復興計画では、全国規模で計画の大幅縮小が行われており、高松戦災復興計画において計画変更がどのように行われたのか、その変更点や予算、組織に着目して事業内容の解明を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の目標は、昨年度に把握した高松都市計画史の内容をもとに、特筆すべき都市空間(道路・広場・公園・港湾および複合施設)の形成史を明らかとし、日常に埋没しがちなパブリックスペースの価値を歴史的、空間的、技術的な視点で再評価していく。具体的には以下の3点を考えている。(1)特筆すべき都市空間の形成史を把握/都市計画事業によって創出された都市空間のなかでも、高松都市計画史から俯瞰して、特に重要と判断できる(現在の高松を象徴するような)都市空間を採り上げ、それらの都市空間が当初の都市計画事業からどのような過程を経て実現し、その後どのような経緯を経て現在に至っているかを把握する。(2)歴史的、空間的、技術的な視点で遺産的価値を評価/特筆すべき都市空間の形成過程を踏まえた上で、まず、歴史的な価値を定性的に把握していく。続いて、都市空間のデザイン・人々の利用という視点(空間的視点)から評価し、事業化から都市空間として形成するまでの技術・予算措置・体制(技術的視点)といった視点からその価値を相対化していく。 (3)都市空間の計画遺産的価値の伝え方に関する事例調査/本研究で明らかとなった都市空間の計画遺産的価値に対して、これをどのような方法で市民や来訪者に伝えることができるのか、国内や海外の歴史資料館や都市空間での展示方法について事例調査を行い、それらの知見を高松でのケーススタディに活かしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用計画に関して、主に以下の3点で考えている。(1)消耗品(書籍・物品)/高松の都市計画史を明らかにするうえで必要な書籍や地図・写真・絵葉書を購入していく。また、全国で進められる都市計画事業とも関わりがあるため、都市計画やまちづくりをテーマとした書籍についても購入していく。(2)旅費/昨年度は主に国立公文書館への出張で旅費を使用したが、今年度は都市空間の遺産的価値の展示方法を事例調査するため、国内の歴史資料館や海外(特にイギリス・ドイツ・北欧諸国)の計画遺産の展示方法について事例調査を行う予定である。(3)謝金/史料を収集し、データを入力分析する補助員を雇い、分析を進めるスピードを上げる予定である。
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