研究課題/領域番号 |
23760614
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研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
小出 祐子 京都精華大学, デザイン学部, 講師 (50593951)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 賀茂別雷神社 / 上賀茂神社 / 江戸時代 / 遷宮 / 賀茂別雷神社文書 |
研究概要 |
本研究は、江戸時代に公儀作事としてすすめられた賀茂別雷神社の遷宮(造替)をとりあげ、社殿の破損が造替の契機になったという従前の見解を新史料から再考し、賀茂社における江戸時代の遷宮の意義について、新たな知見を得ることを目的としてすすめている。2011年度には、10数年にわたる豊富な造営関係文書がのこる安永度遷宮(安永6〈1777〉)を対象に、史料を精査することで主に以下の点に関する研究をすすめ、成果を得た。(1)幕府が遷宮事業に与えた影響 当社では江戸時代に8度の遷宮を行ったが、その間隔は24年から51年に至るばらつきがある。本研究では関連史料から、不定期な造替は社殿破損の度合いに基づくものではなく、遷宮を求める神社の請願が幕府に棄却され続けた結果によるものと判断した。そこで、請願を開始してから10年以上にわたる安永度遷宮をめぐる公儀とのやりとりを検証し、逼迫した財政状況にある幕府の経済政策が遷宮の定期的挙行をのぞむ社の意向を封じ、期日を乱す主要因になったことをあきらかにした。(2)遷宮をめぐる賀茂御祖神社との関わり当社では賀茂御祖神社(下社)としばしば連絡をとり、遷宮を共同で出願することをはたらきかける。江戸時代になり、上・下社で同時期に遷宮を行う慣習が新たに生まれたことは知られているが、その理由は十分に検証されていない。本研究では、造営日記におさめられる下社と交わされた書翰や社内寄合の議決内容を分析し、幕府の遷宮認可を容易に得られない状況下で共同という形式が成立した背景には、両社が結束して賀茂社全体での由緒を訴え、公儀作事としての重要性を強調する意図があったと結論づけた。社の請願に基づき、幕府の裁量で遷宮認可がおりるという枠組みのもと、公儀を説得する手段の一つとして両社の連携が生まれたということがあきらかになり、江戸時代における賀茂両社の関係に新たな知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年度は、研究に着手するための基礎資料を作成するという計画のもと、aすでに収集した造営関係史料から、賀茂別雷神社の遷宮遂行に関わる記述を抄出する。b抄出した記事のデータベース化を行う。cその他関連史料の収集という3点を行う予定であった。このうちa、bの作業に労力を要し、関連史料の収集(c)がすすんでいない。基礎資料の構築作業がやや遅れている一方で、史料整理のなかであきらかになった事実などをまとめ、研究会で報告するなど、次年度に予定している成果の一部とりまとめを行っており、総合的にみておおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画のなかでやや遅れているデータベース構築を進め、あわせて関連史料の収集を行うことが次年度に持ち越す課題である。基礎資料作成作業に関しては、とくに豊富な史料を残す安永度遷宮関連の作業が完成しており、それに基づく考察も順調に進展している。これをモデルとして、今後包括的データベース構築の作業に遅れが生じると判断される場合には、考察対象の遷宮事例をしぼりこみ、作業が確実に研究成果へ結びつくよう、対応をはかる。
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次年度の研究費の使用計画 |
2011年度に遂行できなかった関連史料の収集に要する旅費、複写費等を次年度に使用する。また、研究考察のために必要な関連図書、研究成果発表に要する学会参加費、旅費等を次年度の研究費として使用する計画である。
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