研究課題/領域番号 |
23760676
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
酒瀬川 英雄 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門, 研究員 (00566250)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 構造・機能材料 / 高性能レーザー / 原子力エネルギー |
研究概要 |
本研究の目的は動的光散乱法による分析に適したサンプルを電解抽出残渣法にて調製することで達成され、とりわけ、分析対象の粒子を凝集・沈殿させずにサンプル中に分散させるための条件を明らかにすることが最も重要である。今年度は15 nm以下の粒子のみを含みサイズ分布が一定または既知である分析しやすい析出粒子を持つ材料を対象に電解抽出残渣法を実施してサンプルを調製、動的光散乱法にて分析した。これより動的光散乱法による分析に適したサンプル調製のための条件を調査した。具体的には透過型電子顕微鏡観察などによりサイズ分布が既知となっている低放射化フェライト鋼F82H(日本原子力研究開発機構で研究開発中)を対象とした。これは15 nm程度のタンタル炭・窒化物を持つ材料である。電解抽出残渣法によりこの粒子を含んだサンプルを調製して粒子分散剤のヘキサメタりん酸ナトリウムを添加後、動的光散乱法による分析を実施した。これより水溶液系のサンプルの場合、0.2 wt%のヘキサメタりん酸ナトリウムを添加した場合がこれまでの透過型電子顕微鏡観察などで得られた既知の結果と良い一致を示すことを明らかとした。このサンプルを調製するための実質の必要時間は1 h以内であり、また分析時間は10 min以内である。これらの時間は透過型電子顕微鏡観察(通常12 h程度の必要時間)と比較すれば大きく短時間化が達成されており、また10億倍以上も大きい観察体積から材料を代表できる信頼性の高い分析結果を獲得できている。これは本研究の分析法の長所を示すエビデンスとして意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は動的光散乱法による分析に最適なサンプルを電解抽出残渣法で調製するための条件を明らかにすることで達成される。今年度はサイズ分布が透過型電子顕微鏡観察によって既知である材料について水溶液系のサンプルを調製、その最適な粒子分散剤の種類と濃度を明らかとした。ここで得られた結果はこれまでの既知の結果と良い一致を示しており、電解抽出した析出粒子の動的光散乱による分析法の成立の見通しを得た。また従来の透過型電子顕微鏡観察と比較して、大きく短時間化され(約1/10)、より大きな観察体積から(約10億倍)信頼性高い結果を獲得できた。これは本研究の分析法の長所のエビデンスである。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの成果に基づいて今後はナノメートルサイズのみでなくマイクロメートルサイズの粒子も含んだ広範囲のサイズに渡った分析を行う。具体的には、ナノメートルサイズに合わせてマイクロメートルサイズの粒子を持つ材料(低放射化フェライト鋼および酸化物分散強化型鋼)を対象として電解抽出残渣法を実施、分散剤を添加の後、動的光散乱法による分析に適したサンプル調製の条件を明らかとする。とりわけ、「分散媒の種類」、「分散剤の種類」、「分散剤の濃度」、および、「分析対象の粒子濃度」に注目する。また得られた研究開発成果については国内・国際学会にて積極的に発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として、動的光散乱法による分析実施に関わる消耗物品の購入する。旅費として、国内・国際学会に積極的に参加する。また動的光散乱法について、その専門の研究者・技術者によるセミナーや議論に参加して研鑽を積む。
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