研究概要 |
【内容】火力・原子力発電プラントで利用されている耐熱鉄鋼材料の使用可能寿命はその材料中に存在するナノ析出粒子によって支配される。本研究はこのナノ粒子を従来法と比べて、より広いサイズ範囲で、より短時間に、より大きな試料を分析できる分析方法を研究開発する。前年度までに原子力発電プラントで使用される耐熱鉄鋼材料(Fe-8Cr-2W-V, Ta)を供試材として動的光散乱法による分析に適した電解抽出残渣法によるサンプルの製作条件を明らかとした。ここでは25 nm、および、120 nmのナノ粒子を同時分析してバイモーダルな粒径分布を獲得できた。これは透過型電子顕微鏡による従来の観察結果と一致するものであり、本分析方法が実証された。 しかし分析用サンプルの製作方法についてはより簡便なものとするべく余地があったたため、今年度は分析結果の再現性を損なうことなくその方法を簡便とすることを目的とした。具体的には電解抽出残渣法を実施後、濾過分別を実施することなく電解抽出残渣液を直接に動的光散乱法にて分析することを試みた。これより分析対象のナノ粒子からのシグナルがそれらの凝集体などからのノイズによって大きく影響されることを確認した。そこで超音波分散と遠心分離の利用によってこの克服を試みた。その結果、ナノ粒子のサンプル中の最適濃度の調整については最適化の余地があるものの、超音波分散と遠心分離条により凝集体からのノイズを低減でき分析結果の再現性を向上できる見通しを得た。 【意義】耐熱鉄鋼材料の使用可能寿命を支配するナノ析出粒子分布情報を電解抽出残渣法と動的光散乱法の従来にはなかった新しい組み合わせによって獲得した。従来法と比べて、より広いサイズ範囲で、より短時間に、より大きな試料を分析できる新しい分析方法を提示できた。
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