研究課題/領域番号 |
23760747
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
加藤 竜也 静岡大学, 農学部, 助教 (00397366)
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キーワード | カイコ / タンパク質発現 / ハイスループット |
研究概要 |
前年度にカイコを用いたハイスループットタンパク質発現のためのligation-independent cloning (vector)を構築したが、今年度はマルチウェルプレート(96ウェルプレート)を用いた大腸菌からのBmNPVバクミド抽出と抽出したBmNPVバクミドDNAを用いたカイコさなぎでの組換えタンパク質生産を行った。1ウェルあたり平均50-60 ng/ulのBmNPVバクミドDNA(ヘルパープラスミドを含む)が得られた。電気泳動で抽出したBmNPVバクミドを確認したところ、通常のアルカリ抽出法で抽出したBmNPVバクミドに比べて、ゲノムDNAの混入が減少していたことから、より純度の高いBmNPVバクミドDNAが抽出されていることが確認できた。EGFPまたはmcherry融合タンパク質遺伝子を持つBmNPVバクミドDNAをこの方法で抽出して、45ul(約2.5ug)使用してトランスフェクション試薬とともにカイコ蛹へ注射して、蛍光タンパク質融合タンパク質の発現を行った。注射後6-7日でカイコさなぎにEGFPおよびmcherry蛍光が確認できたことから、組換えタンパク質が発現していることが確認できた。カイコさなぎをPBS(pH7.4)で懸濁し、超音波破砕で破砕後の破砕液にもEGFP蛍光が確認でき、SDS-PAGE上でもEGFP融合タンパク質の発現が確認できた。同時に抽出したEGFP融合タンパク質遺伝子を持つAcMNPVバクミドDNAを注射したカイコさなぎには、EGFP蛍光が確認できなかった。このことからマルチウェルプレートを用いたBmNPVバクミドDNAの抽出法とカイコさなぎでのタンパク質生産法を確立できたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度でのLICベクターの構築および今年度でマルチウェルプレートを用いたBmNPVバクミドDNAの抽出法とカイコさなぎでのタンパク質生産法を確立できたことから、カイコ蛹のハイスループット(またはメディウムスループット)タンパク質発現・精製システム構築の60%程度まで確立できたといえるが、今後マルチウェルプレートを用いた組換えタンパク質精製法を確立する必要がある。またより効率のよい遺伝子クローニングシステムを目指すために、BmNPVバクミドDNA自体の改良も進める必要があるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
達成度の欄でも記述したとおりに、カイコ蛹のハイスループット(またはメディウムスループット)タンパク質発現・精製システムを完成させるために、マルチウェルプレートを用いた組換えタンパク質精製法を確立を目指す。また、LICベクターをすでに構築しているが、より効率的なハイスループット・メディウムスループットタンパク質発現を目指すために、BmNPVバクミドDNA自体の改良をする。BmNPVバクミドDNAの改良は申請時の予定にはなかったが、研究を進めるうえでBmNPVバクミドDNAの改良が必要と判断されたため行う。具体的には従来の環状BmNPVバクミドDNAでなく直鎖状のBmNPVバクミドDNAを構築することで、大腸菌を使用しないでone-potで組換えBmNPVバクミドDNAを作製できるシステムを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進・方策の欄で記述したとおり、直鎖状のBmNPVバクミドDNAを構築するために、今年度から次年度へ繰り越す研究費を使用する(遺伝子組み換え実験試薬や細胞培養培地などの消耗品など)。また、次年度の研究費は、予定通りに、マルチウェルプレートを用いた組換えタンパク質精製法を確立するために使用する。
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