研究課題
ヒスタミンH1受容体(H1R)はアレルギー症状の主たる要因となっているGタンパク質共役型受容体(GPCR)で、創薬の重要なターゲットである。我々は前年度にH1Rとインバースアゴニストであるドキセピンとの複合体の立体構造を分解能3.1Aで明らかにした。これによりH1Rの全体構造およびインバースアゴニストによる不活性化のメカニズムが明らかとなった。さらに立体構造より細胞外領域付近にアニオン結合部位を見出した。しかし現在の分解能ではリガンド結合に重要な役割を果たす水分子が全く観察できておらず、さらに高分解能の立体構造を明らかにする必要がある。本年度は高分解能の結晶構造解析を目指し、H1Rのコンストラクトの再構築を行った。そこでT4リゾチームの融合位置に着目した。つなぎ目を1残基長くまたは短くすることで、H1RとT4Lの相対的な配置が変化し、結晶中でのパッキングが改善する可能性がある。本研究ではT4リゾチームのC末端と接続するH1Rの残基を現行のコンストラクトよりも1残基短くしたもの(H1R-T4L-C1)、1残基長くしたもの(H1R-T4L+C1)、1残基長くしつなぎ目をグリシンに置換したもの(H1R-T4L+C1G)の3種類を作製した。ピキア酵母を用いた大量発現系を構築し、培養条件の最適化を行い十分な量の発現を確認した。現在大量培養、精製、結晶化を進行中である。また本年度はアニオン結合部位の役割を詳細に解析するために、これに関わる3つの残基(Lys179、Lys191、His450)のAla変異体を作製した。ピキア酵母を用いた発現系を構築し、4種類の変異体の発現に成功した。放射性同位体ラベルリガンドを用いた結合実験の結果、第1世代抗ヒスタミン薬に対する結合親和性はどの変異体も大きな違いは無かった。現在第2世代抗ヒスタミン薬を用いた結合試験を進行中である。
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YAKUGAKU ZASSHI
巻: 未定 ページ: 未定
Microb Cell Fact.
巻: 11:78 ページ: 1-12
10.1186/1475-2859-11-78.