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2011 年度 実施状況報告書

複数回膜貫通タンパクTMBIMファミリーによる糖脂質生合成制御及び分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23770164
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

山地 俊之  国立感染症研究所, 細胞化学部, 主任研究官 (50332309)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード糖鎖 / 糖鎖 / 膜タンパク / 代謝
研究概要

スフィンゴ糖脂質の機能に関しては多くの知見が得られているが、同時に重要なのがその代謝制御機構の解明である。糖脂質は様々な代謝産物が生じる上、それぞれの代謝が異なる細胞内小器官で起こる。そのため代謝酵素の量(mRNA)だけでなく、これら酵素の細胞内局在や糖脂質輸送を制御する因子の同定が、糖脂質の発現制御を理解する上で必要不可欠である。 以前申請者はスクリーニングにより、機能未知のタンパクGRINAのC末端側(GRINA-C)がGb3生合成抑制活性を有することを明らかにした。このGRINAは複数回膜貫通タンパクTMBIM (Transmembrane BAX Inhibitor motif containing) ファミリーに属し、FAIM2を含む他のメンバーにおいてもその全長を過剰発現させることでGb3生合成を抑制する。本研究ではこれらの知見をふまえ、1.この現象が生理的に起こる場面の特定、2.TMBIMファミリータンパクに対する結合タンパクの同定3.糖鎖・脂質・タンパク輸送への影響に関する解析、を遂行することで、TMBIMファミリーの新たな機能解明を目的とする。 本年度はFAIM2に関して、以下に挙げる2つの知見を得た。1つ目はFAIM2のN末側細胞質領域において、ユビキチンE3リガーゼの一種であるNEDD4-2が結合することを明らかにした。2つ目はFAIM2の膜貫通領域において、TMBIMファミリーで保存されているアスパラギン酸残基が機能に必須であり、アラニン置換したところ、Gb3生合成低下能及びFASアポトーシス抑制能の両機能が大幅に失われることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究計画のうちH23年度の主な計画であった、「TMBIMファミリーによってGb3合成低下が生理的に起こる場面を特定する」ことに関して、まずヒトの各臓器mRNAパネルを用いてTMBIMファミリーの発現比較、及びGb3低下活性の強いsplicing variantの探索を行った。しかし現在まで糖脂質活性に影響を与えるような証拠は得られていない。またタンパクレベルで、特にGRINA-CのようなTMBIMファミリーC末端タンパク(ほとんど膜貫通領域)を検出できるよう、膜貫通領域間のループに対するペプチド抗体を作製したが、その付近は疎水性が高い領域ということもあり、ウエスタンブロットで検出できる抗体を得ることが出来なかった。 その一方でH24年度に計画していた「TMBIMファミリーに結合するタンパクの探索」に関しては、上記の通りユビキチンE3リガーゼの一種であるNEDD4-2がFAIM2と結合することを明らかにし、FAIM2の細胞質ドメインに存在しているNEDD4ファミリー結合モチーフのチロシンをアラニンに変えると結合しなくなることも確認したことより、この計画に関しては一定の成果を上げている。またTMBIMファミリー間で保存されているアスパラギン酸残基の重要性を明らかにしたことで、全期間の目標であるTMBIMファミリーの新たな機能解明において、特にどのような分子装置であるのかを探る上での突破口となると考えている。

今後の研究の推進方策

「TMBIMファミリーによってGb3合成低下が生理的に起こる場面を特定する」ことに関しては、Gb3発現が知られているヒトB細胞株に標的を絞り、通常の培養条件だけでなく様々な刺激を加えたとき、Gb3生合成変化の有無と、TMBIMファミリーの発現変化、splicing variantの有無を探索する。この際もう一度splicing variantタンパクが検出できるようなペプチド抗体の作製を試みる。 一方上記で明らかにした2点、1. FAIM2とNEDD4-2との結合、2. FAIM2の機能に必須なアミノ酸、に関しては、今後さらに発展させ、1に関しては、FAIM2の代謝、細胞内局在の変化を解析することで、その結合の意義を探る。2に関してはFAIM2のGb3生合成低下能及びFASアポトーシス抑制能に対しどのように影響するか、FASやGb3合成酵素の細胞内局在等を比較する。またこのアスパラギン酸残基と同様、TMBIMファミリー間で保存されているアミノ酸についても検討することで、このファミリーはどのような分子装置なのかという本質に迫りたい。 さらにH25年度に計画している、TMBIMファミリーによる他の脂質・糖鎖・タンパク輸送への影響についても、上記の課題が軌道に乗り次第、開始したいと考えている。

次年度の研究費の使用計画

(I) B細胞株における転写量の比較・Splicing variantの存在 - Gb3発現の見られるヒトB細胞株に対して、様々なストレス刺激を行うことで、Gb3発現量の変化と、それに伴うTMBIMファミリーの発現量変化やSplicing variantの発現についてPCRで比較・検討する。(II) C末Short form variantのタンパク同定のための抗体作成 - C末Short form variantが検出できるかは非常に大事な点であるので、H23年度で失敗している抗ペプチド抗体作製に関し、別の箇所を標的として再び作製を試みる。ウエスタンブロットでタンパクを検出出来るかチェックする。(III) FAIM2とNEDD4-2との結合の意義 - FAIM2のwild typeとNEDD4-2結合能を失った変異体を用いて、細胞内局在の変化、FAIM2の代謝への影響について検討する。(IV) FAIM2の活性に必要なアミノ酸残基の同定 - 上記に示したようにFAIM2の膜貫通領域付近において、TMBIMファミリーで保存されているアスパラギン酸残基が機能に必須であることを明らかにしたが、他にも保存されているアミノ酸が存在する。そこでこれらのアミノ酸に対しアラニン置換を行い、Gb3生合成低下能及びFASアポトーシス抑制能に影響を及ぼすアミノ酸を同定する。またこれらの変異体とwild typeを発現させたときのFAIM2自身、Gb3合成酵素やFASの細胞内局在、またこれらの発現量に違いがあるか検討する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Colonic epithelial cells express specific ligands for mucosal macrophage immunosuppressive receptors siglec-7 and -92012

    • 著者名/発表者名
      Miyazaki K., Sakuma K., Kawamura Y.I., Izawa M., Ohmori K., Mitsuki M., Yamaji T., Hashimoto Y., Suzuki A., Saito Y., Dohi T., and Kannagi R.
    • 雑誌名

      Journal of Immunology

      巻: 188 ページ: in press

    • DOI

      10.4049/jimmunol.1100605

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 3D Modeling of a Natural Killer Receptor, Siglec-7: Critical Amino Acids for Glycan-Binding and Cell Death-Inducing Activity2011

    • 著者名/発表者名
      Yamaji T., Yamaguchi Y., Mitsuki M., Takashima S., Waguri S., Hashimoto Y., and Nara K.
    • 雑誌名

      「Modeling and Simulation in Engineering, INTECH

      巻: ISBN: 978-953-307-959-2 ページ: 103-116

    • DOI

      10.5772/31157

    • 査読あり
  • [学会発表] TMBIMファミリーの糖脂質生合成への影響とその制御機構2011

    • 著者名/発表者名
      山地俊之、西川喜代孝、花田賢太郎
    • 学会等名
      第84回日本生化学会大会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2011.9.23
  • [学会発表] 糖脂質再構成細胞における受容体活性と膜流動性の関連性の解析2011

    • 著者名/発表者名
      櫻井祐介、山地俊之、花田賢太郎、樺山一哉
    • 学会等名
      第84回日本生化学会大会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2011.9.22

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公開日: 2013-07-10  

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