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2012 年度 実施状況報告書

複数回膜貫通タンパクTMBIMファミリーによる糖脂質生合成制御及び分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23770164
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

山地 俊之  国立感染症研究所, 細胞化学部, 主任研究官 (50332309)

キーワード糖脂質 / 膜タンパク / 代謝 / TMBIMファミリー
研究概要

スフィンゴ糖脂質の機能に関しては多くの知見が得られているが、同時に重要なのがその代謝制御機構の解明である。糖脂質は様々な代謝産物が生じる上、それぞれの代謝が異なる細胞内小器官で起こる。そのため代謝酵素の量(mRNA)だけでなく、これら酵素の細胞内局在や糖脂質輸送を制御する因子の同定が、糖脂質の発現制御を理解する上で必要不可欠である。
以前申請者はスクリーニングにより、機能未知のタンパクGRINAのC末端側(GRINA-C)がGb3生合成抑制活性を有することを明らかにした。このGRINAは複数回膜貫通タンパクTMBIM (Transmembrane BAX Inhibitor motif containing) ファミリーに属し、FAIM2を含む他のメンバーにおいてもその全長を過剰発現させることでGb3生合成を抑制する。本研究ではこれらの知見をふまえ、1.この現象が生理的に起こる場面の特定、2.TMBIMファミリータンパクに対する結合タンパクの同定3.糖鎖・脂質・タンパク輸送への影響に関する解析、を遂行することで、TMBIMファミリーの新たな機能解明を目的とする。
本年度は、昨年度明らかにしたFAIM2とユビキチンE3リガーゼの一種であるNEDD4-2との相互作用に関して、FAIM2の細胞質領域のリコンビナントタンパクを作製し、NEDD4-2との結合を確認した。またFAIM2の種々の変異体を安定に発現させた細胞株を樹立し、細胞内局在と機能について比較・検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上記概要に記した「TMBIMファミリーによってGb3合成低下が生理的に起こる場面を特定する」ことに関して、本年度はB細胞株の一種Namalwaのサブクローンを用いて、同ファミリーの発現量について検討したが、残念ながら糖脂質組成との関連性についてのデータは得られなかった。一方GRINA のsplicing variant(全長)をクローニングし、それらを細胞に強制発現させたところ、そのcDNAのうち1つは強いGb3低下能を有していた。このcDNAはNCBIのData base (Aceview)に登録されているものであるが、発現させるとさらにsplicingを起こしてGRINA-Cを発現することが明らかとなった。これはGRINA-Cが発現する可能性を示唆する結果であり、今後re-splicingの有無を含めて検討したいと考えている。
一方昨年度明らかにした、FAIM2とNEDD4-2との相互作用については、大腸菌によりFAIM2の細胞質領域を精製し、Cell Lysateと混ぜることで、in vitroでの結合を確認した。ただしこの結合が生理的にどのような意味を有するかは、まだ解明できていない。少なくともFAIM2のNEDD4-2結合能を失った変異体(Y38A)は過剰発現させることにより、野生型と同様FASによるアポトーシスや志賀毒素によるアポトーシスを抑制する機能は維持しており、それは細胞質領域を欠いた変異体(deltaN)でも同様であった。細胞内局在を比較したところ、野生型とY38AがDot状の局在を示したのに対し、deltaNはゴルジ体とERに分布していたことから、細胞質領域は細胞内局在に大きく影響するが、Y38とは無関係であることが示唆された。

今後の研究の推進方策

3年目であるので、以下の2点に絞って解析する。
(1) FAIM2とNEDD4-2との結合に関しては、FAS及びGb3合成酵素との結合も考慮し、これらの分子のユビキチン化が見られるか、またタンパク寿命に変化があるかについて検討することで、FAIM2とNEDD4-2との結合における生理的な意義を探る。
(2) FAIM2の膜貫通領域において、TMBIMファミリーで保存されているアスパラギン酸残基が、機能に必須であることを初年度明らかにしている。その続きとして、他の保存されているアミノ酸のうち、機能に必須なものはあるか、また他のTMBIMファミリーでこれらのアミノ酸が機能に必須であるかを比較検討することで、保存されている膜貫通領域の分子機能を解明する。

次年度の研究費の使用計画

(1) FAIM2とNEDD4-2との相互作用ーFAIM2の野生型及び変異体を発現させた場合のFAIM2及びFASやGb3合成酵素のユビキチン化の有無を免疫沈降と抗ユビキチン抗体によって検出する。またPulse chase実験によりこれらのタンパク分子の寿命に違いが現れるか検討する。細胞内局在のより詳細な検討も行う。
(2) FAIM2の活性に必要なアミノ酸残基の同定ーFAIM2、GRINA-C、BI-1に関して、TMBIMファミリーで保存されているアミノ酸をアラニン置換し、機能に必須であるアミノ酸を同定する。これらのアラニン置換体に関して、それぞれ野生型だと結合する分子(FAIM2-FAS、GRINA-C-Gb3合成酵素、BI-1-IP3R or IRE1)との結合が阻害されているか検討する。また細胞内局在の検討を行う。
(3)細胞内相互作用を検出する蛍光蛋白質再構成法(BiFC)の導入ー上記の相互作用を細胞内で検出するため、BiFC法を導入する。特にFAIM2とFAS、Gb3合成酵素、NEDD4-2、GRINA-CとGb3合成酵素の組合せに関して、CoralHue® Fluo-chase Kitを用いてPlasmidを作製し、それぞれの相互作用が検出できる条件を検討する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Colonic epithelial cells express specific ligands for mucosal macrophage immunosuppressive receptors siglec-7 and -9.2012

    • 著者名/発表者名
      Miyazaki K, Sakuma K, Kawamura YI, Izawa M, Ohmori K, Mitsuki M, Yamaji T, Hashimoto Y, Suzuki A, Saito Y, Dohi T, Kannagi R.
    • 雑誌名

      Journal of Immunology

      巻: 188 ページ: 4690-4700

    • DOI

      10.4049/jimmunol.1100605

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structural basis for the Golgi association by the pleckstrin homology domain of the ceramide trafficking protein (CERT).2012

    • 著者名/発表者名
      Sugiki T, Takeuchi K, Yamaji T, Takano T, Tokunaga Y, Kumagai K, Hanada K, Takahashi H, Shimada I.
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 287 ページ: 33706-33718

    • DOI

      10.1074/jbc.M112.367730

    • 査読あり
  • [学会発表] セラミド輸送タンパク質CERTのプレクストリン相同ドメインによるホスファチジルイノシトール4ーリン酸認識の構造基盤2012

    • 著者名/発表者名
      花田賢太郎、杉木俊彦、竹内恒、山地俊之、高野等覚、徳永祐二、熊谷圭吾、高橋栄夫、嶋田一夫
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121214-20121216
  • [学会発表] podocalyxin上のO-glycanは癌の免疫逃避を促進する2012

    • 著者名/発表者名
      南部今日子、橋本登、伊藤静香、山地俊之、橋本康弘、古川圭子、古川鋼一
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121214-20121216
  • [学会発表] 糖脂質再構成細胞における膜流動性と成長因子受容体の関連2012

    • 著者名/発表者名
      櫻井祐介、山地俊之、花田賢太郎、樺山一哉
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121214-20121216

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公開日: 2014-07-24  

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