研究概要 |
放牧草を主体とした飼養方法で生産される牛乳(放牧牛乳)において、これまでの研究より脂質部分(クリーム)に明らかな特徴が認められている。本研究目的は、特徴的な脂質構成を有する放牧牛乳の原料としての魅力を最大限に活かした乳製品製造を行うため、とくに放牧牛乳由来クリーム(放牧牛乳クリーム)の付加価値化技術の開発に向け、放牧牛乳クリームの抽出・調整方法及びこれを利用した発酵試験により基礎的知見を得ることである。研究計画初年度となる本年度は、放牧牛乳クリームを目的となる濃度に調整するため、原料からの調整方法を検討した。さらに、抽出・調整したクリームを乳酸菌スターター(種菌)により発酵試験に供するため発酵条件の検討を行った。放牧牛乳10kgを45℃に加温しクリームセパレーター(エレクレムF1)を使用してクリームを抽出し、乳脂率はミルコスキャン法およびバブコック法の両測定法により確認した。抽出された放牧牛乳クリームの乳脂率を確認したところ、平均59.6%(ミルコスキャン法でも59.7%)で抽出可能であり、市販フレッシュクリーム(35-40%)と同等以上の濃度で抽出が可能であった。また、この条件で抽出された放牧牛乳クリームを40%に調整した後、90℃以上30分殺菌処理し、4℃12時間以上エイジングしたものを発酵条件の検討に用いた。発酵条件(スターター添加量および培養温度)の検討には、16%還元脱脂乳で前培養した乳酸菌バルクスターターA,B,C(いずれもクリスチャンハンセン社)を用いて24時間の発酵試験を行った。発酵クリームサンプルは、1,2,3,4,5,6及び24時間のものを採取した。本研究結果より、適度な発酵条件と考えられたスターターの添加量はクリームの2%であり、培養温度はAおよびB添加区は37℃、C添加区は32℃で培養24時間でのpHの持続的な低下が認められた。
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