研究概要 |
本年度は、前年度実施できなかった放牧牛乳由来クリームを均質化し、三種類のスターターによる発酵が機能性脂質合成に及ぼす影響について検討を行った。 試験方法は、昼夜放牧を行った牛より採取した牛乳を約40℃に湯煎したのちにクリームセパレーターにより分離したクリームをホモジナイザー(2段)により均質化を行った。得られたクリームをバブコック法により濃度測定した後、最終濃度が40%になるように調整し、沸騰水中で30分殺菌した後、冷蔵庫の中で翌日までエイジングしたクリームを用いた。このクリームに市販のスターター(乳酸菌など)を2%で播種し、それぞれのスターターに最適な温度で24時間の発酵試験を行った。発酵クリームのサンプリングは、3時間までは30分おきに、3時間目以降は1時間おきに6時間まで、その後24時間目で行い分析まで-50℃で保存した。全ての試験において経時的なpHの低下を確認した。 前年度より取り組んだクリームからの脂質抽出については、得られた発酵クリームを1g採取し、蒸留水1mlを加え攪拌後、ヘキサン4mlを加えさらに撹拌する。この溶液を3000rpm5分間遠心分離後、上澄みを500μLずつ分注し、脂質重量、脂肪酸分析を行うことで抽出脂質重量は安定した。 脂肪酸分析は、レーゼゴットリーブの変法により抽出された脂質を1Mナトリウムメトキシドメタノール溶液と14%三フッ化ホウ素メタノール溶液によってメチルエステル化し、ガスクロマトグラフおよびガスクロマトグラフ質量分析を用いて同定、定量を行った。 本年度の発酵試験における共役リノール酸(cis9,trans11)濃度の変化は、三種類のスターターのうちプロバイオティクスを含む一種類で、発酵時間が経過してもほとんど濃度変化が見られないのに対して、他の二種類は低下する傾向があった。
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