プリオン病患者および罹患動物の脳では補体因子の沈着が認められるが、病態における役割は不明である。本研究では、プリオン感染神経細胞に補体を反応させると細胞膜の透過性が亢進するものの、細胞死は起こらないことが示唆された。この現象はChandler株と22L株、いずれを感染させた神経細胞でも観察されたが、異常型プリオンタンパク質 (PrPSc)の蓄積に与える影響は異なっており、Chandler株に対しては増殖抑制効果、22L株に対しては増殖増強効果が認められた。今後はその他のプリオン株でも補体因子がPrPSc増殖に与える影響を検討し、補体因子の活性化制御によるプリオン病治療の可能性を探る。
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