研究課題/領域番号 |
23790099
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
亀井 大輔 昭和大学, 薬学部, 講師 (80515651)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 顔面神経麻痺 / PGE2 / mPGES-1 |
研究概要 |
末梢性顔面神経麻痺の重症化は顔面神経内での炎症による神経障害の悪化が示唆されているが、その詳細な分子メカニズムは明らかになっていない。申請者は、本疾患の重症化に生理活性脂質のプロスタグランジン(PG)E2とPGE2の最終合成酵素である膜結合型PGE合成酵素(mPGES-1)の寄与に着目し、新たな顔面神経麻痺の治療法の基盤の確立を目指している。平成23年度はマウス顔面神経麻痺モデルの樹立と性状解析及びmPGES-1遺伝子欠損(KO)マウスを用いた解析を実施した。(1) マウス顔面神経麻痺の発症と回復過程に関わるPGES分子種の同定の結果 Balb/c系マウスの右側頭骨外顔面神経本幹を圧迫挫滅し顔面神経麻痺を発症させ、麻痺側の臨床スコアと鼻周辺の弛緩面積を指標にして麻痺の回復過程を対照群と比較検討した。その結果、圧迫挫滅処理群の右顔面片麻痺は術後3日目より回復傾向を示し、術後14日目には完全な回復を認めた。また施術後3, 7, 14日目でPGE2とPGF2αの有意な産生亢進が観察され、その産生変動は麻痺の回復過程と相関した。さらに圧迫挫滅した神経組織中ではCOX-2及びmPGES-1 mRNAの発現亢進が認められ、その他の関連酵素の発現変動はみられなかった。(2) mPGES-1 KOマウスを用いた顔面神経麻痺モデルの解析(解析中) mPGES-1欠損時の顔面神経麻痺の回復過程の解析については、現在、解析途中。 平成23年度の解析において、マウス顔面神経麻痺モデルの樹立に成功し、麻痺の回復過程の神経組織中でPGE2とPGF2αの産生が亢進することを明らかにした。さらにこれらPGsの合成にCOX-2とmPGES-1が寄与する可能性が示唆された。この結果は顔面神経麻痺の回復過程にPGE2とPGF2αの寄与を示唆する初めての知見であり、本研究において非常に重要な研究成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトの目的を達成するための研究計画において、平成23年度は、(1) 側頭骨外顔面神経の圧迫挫滅法によるマウス顔面神経麻痺モデルの樹立と性状解析、さらに (2) mPGES-1遺伝子改変マウスを用いた検討、を計画していた。本年度の研究の結果、マウス顔面神経麻痺モデルの樹立に成功し、麻痺の回復過程にPGE2とPGF2αの寄与を示唆する重要な知見を得たことが大きな進展であった。一方、遺伝子改変マウスを用いた検討においては、実験に使用する固体の確保が計画通りに進まず、実験結果の再現性の検証まで至らなかった。以上の理由をふまえ、本年度の到達度を2と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究推進方策は、研究計画調書の予定に大きな変更はなく、樹立したマウス顔面神経麻痺モデルも用いて、マイクロアレイを用いたディファレンシャル・ディスプレイの実施とmPGES-1 siRNA投与による顔面神経麻痺の抑制効果の検討を中心に実施する。 平成24年度の研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での課題は以下の2点で、(1) 平成23年度から継続して実施中である遺伝子改変マウスを用いた検討の追加と、(2) 迅速な臨床応用を目指した方策として、既存の抗炎鎮痛薬の投与による顔面神経麻痺の治療効果への影響の検討を追加する。 以上の推進方策により、顔面神経麻痺の新たな治療法の基盤の確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究推進方策のうち、樹立したマウス顔面神経麻痺モデルも用いてマイクロアレイを用いたディファレンシャル・ディスプレイの実施とmPGES-1 siRNA投与による顔面神経麻痺の抑制効果の検討、さらに研究成果の迅速な臨床応用を目指して追加した方策である、既存の抗炎鎮痛薬の投与による顔面神経麻痺の治療効果への影響の検討、以上3つの研究方策に係る研究費は、当初の研究計画調書に申請した請求額内で実施する。 また、平成23年度から継続して実施中である遺伝子改変マウスを用いた検討に係る研究費については、継続課題であることもふまえ、平成23年度より繰り越した研究費で実施しする。
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