研究課題
末梢性顔面神経麻痺の重症化には効果的な治療法が確立されておらず、その詳細な分子メカニズムも明らかになっていない。申請者は、本疾患の重症化への生理活性脂質プロスタグランジン(PG)E2とPGE2の最終合成酵素である膜結合型PGE合成酵素(mPGES-1)の寄与に着目し、新たな顔面神経麻痺の治療法の基盤の確立を目指した。平成23年度の検討では、マウス顔面神経麻痺モデルを樹立、解析し、神経損傷部位において麻痺の回復に伴ってPGE2が顕著に産生されること、また、その産生には合成酵素であるCOX-2とmPGES-1が寄与していることを明らかにした。平成24年度の検討では、顔面神経麻痺の回復過程におけるmPGES-1由来のPGE2の寄与について、阻害剤(NSAIDs)を用いた詳細な解析を実施した。常法に従い顔面神経麻痺を発症させたBalb/c系マウス(5~7週齢)に対し、NSAIDs投与群としてインドメタシン5 mg/kgまたは0.5 mg/kgを術前及び継続投与し、麻痺の回復過程を対照群と比較検討したところ、インドメタシン投与群は、対照群と比較して、麻痺の回復が濃度依存的に亢進する傾向が認められた。次に、インドメタシン投与により神経の回復に伴って発現変動する遺伝子群を、対照群と比較検討した結果、インドメタシン投与群では、対照群と比較して、神経栄養因子BDNFとNT3の発現亢進が認められた。以上より、顔面神経麻痺の回復過程において、神経炎症に起因するmPGES-1由来のPGE2産生をNSAIDs投与により抑制することで、BDNFまたはNT3の産生が増大し、顔面神経麻痺の回復が亢進する可能性が示唆された。今後、mPGES-1を標的分子とした顔面神経麻痺の新たな治療戦略が、ステロイド療法より副作用の少ない、より有用な治療法となることが期待される。
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