研究課題/領域番号 |
23790260
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
河尾 直之 近畿大学, 医学部, 助教 (70388510)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 肝修復 / マクロファージ / u-PA |
研究概要 |
プラスミノゲンアクチベーター (PA) /プラスミン系は肝臓の組織再生・再構築において中心的な役割を果たしているが、その詳細な機構は不明である。本研究課題では、PA/プラスミン系による肝修復過程におけるマクロファージの機能制御機構を解明することを目的とする。 1. 肝障害部位へのマクロファージ集積におけるu-PAの役割:u-PA遺伝子欠損マウスとその野生型マウスの肝臓に障害を誘起し、障害部位へのマクロファージの集積と障害部位の減少を検討した。その結果、野生型マウスと比較し、u-PA遺伝子欠損マウスではマクロファージの集積が有意に減少するとともに、障害部位の減少が著明に遅延した。一方、t-PA遺伝子欠損マウスおよびu-PA受容体欠損マウスでは肝障害部位へのマクロファージの集積に変化は見られなかった。 2. マクロファージの表現型誘導におけるu-PAの役割:野生型マウスの肝障害部位周囲において、マクロファージはCD206や誘導型一酸化窒素合成酵素を発現し、多様な表現型を示していた。一方、u-PA遺伝子欠損マウスのマクロファージではこのような表現型の多様性は見られなかった。 3. マクロファージの貪食能におけるu-PAの役割:u-PA遺伝子欠損マウスおよび野生型マウスの腹腔由来マクロファージの貪食能に有意な差は見られなかった。また、マクロファージをu-PAによって刺激したが、貪食能に変化は見られなかった。 以上より、肝修復過程においてu-PAは障害部位へのマクロファージの集積とそれらの活性化に寄与することが示唆された。また、u-PAはマクロファージの貪食を直接活性化しないことから、障害部位においてその周囲の微小環境を調節してマクロファージの機能を制御することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、研究はほぼ計画通りに進行しており、本年度の研究成果の一部は既に海外の学術雑誌に掲載されている(Kawao N. et al. 2011. Thromb Haemost., 105.892-900.)。さらに、第89回日本生理学会大会などにおいても成果の発表を行った。また、来年度に計画している実験についても基礎的な検討を終了している。 これらのことを総合的に判断して、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究が順調に遂行しているため、大きな計画の変更は行わず、基本的に来年度の計画に則り研究を推進していきたいと考えている。また、来年度は本研究課題の最終年度であるため、すべての実験を12月までに終了し、それ以降は研究のまとめや成果発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
来年度は本研究課題の最終年度であるため、消耗品費は12月までにすべて使用するとともに、実験を終了する計画である。さらに、研究成果のまとめとして、論文投稿に必要である論文校正費用および論文掲載費用は1月までに使用する計画である。また、来年度は研究成果発表のため海外出張旅費(アメリカ)を10月に使用する予定である。
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